NHKが秘密のクルーを結成し美智子さまのスピーチを録画
末盛さんは元編集者。1989年に「すえもりブックス」という一人出版社を設立し、『THE ANIMALS』をはじめとした数々の名著を世に送り出した。
なかでも末盛さん自身が“記念碑的な一冊”と挙げた、上皇后美智子さまの『橋をかける─子供時代の読書の思い出』は、今も読み継がれるロングセラーとなっている。その中にも、美智子さまとの交流が書かれているが、改めて『橋をかける』の出版までのいきさつを懐かしそうに振り返ってくれた。
「当時、私はIBBY(国際児童図書評議会)という組織に関わっていました。2年ごとに世界大会が開催されていて、1988年には美智子さまがインドの世界大会にいらっしゃるとのことで、そのお手伝いをしていました。
美智子さまは大会初日の基調講演をなさる予定でしたが、大会の前にインドで核実験があり、その影響でインドに行けなくなってしまった。美智子さまは大変お嘆きになってね。初日の講演がなくなることが、その会を運営する人にとってどれだけのダメージか、その申し訳なさで、本当に落胆されていました」
末盛さんいわく「自分は困ったら何かを探し出して、気休めを言う癖がある」。このときも美智子さまに、こんなふうに言ったという。
「今の時代、ビデオで映像を流す方法があるじゃないですかと申し上げたんです。
そうしたら、翌朝早くに侍従長から電話がかかってきて、あなたの亡くなったご主人の伝手でNHKにビデオ撮影の協力を頼んでくれって。そんなこと、猫の首に鈴をつけるようなものですよね。でも受けないわけにはいかないので、『はい』と申し上げて、亡くなった夫の元上司でNHKの会長もされていた川口幹夫さんに相談に伺いました。
するとすぐに、放送総局長につないでくださった。放送総局長は開口一番、『私が新聞の編集局長だったら、これは1面に全文ノーカットで載せます』っておっしゃってくださって。本当にわが意を得たり、と思いましたね」
そこから末盛さんのミッションインポッシブルが始まる。
「NHKが秘密のクルーを結成し、独占的に美智子さまのスピーチを録画しました。そして、そのビデオを私がインドの大会に持っていったんです。無事に会場で上映が終わり、すぐにNHKと宮内庁に電話をしてそのことを知らせたら、その夜遅くにNHKで放送されました。
52分の映像でしたが、500万人もの人が見たそうです。その後、ほかの局でも放送されました。そのときの私は、本当に歴史に立ち会っているという感じ。恐ろしいような気持ちと高揚感の両方がありました」

















