そこから毎日、せっせと脚本書きが始まり、書いてはメール、打ち合わせしては執筆の繰り返し。メールも打ち合わせも的確なアドバイスをしてくれ、そこからいろんなことを学びました。息抜きに面白かった映画や本、音楽もすすめてくれるサービス付き。

 新・初稿を見せて、「いいセリフありました?」と私がなにげなく聞くと、大八監督は少し思案して、「『燃費がよすぎて入れ時わかんないのよね、この車』くらいですかね」と言われ、あごが落ちそうになりました。

 そこだけかよ! と心の中で叫び、そんな日々を続け、なんとかかたちが見えてきました。

 作中に「夫婦は、そもそも他人でしょ、他人同士が、一緒に困難を乗り越えることで、初めて夫婦としての絆が生まれる、ていうのかな」という隆介のセリフがありますが、これがこれまでの彼の価値観だった。このセリフがドラマで一番ダサいセリフになるよう心がけ脚本を書きました。

 とにかく打ち合わせが楽しかったのも確かです。どMか!?

 質問に《他局のドラマのオマージュが散見〜》とありましたが、

 隆介は脚本家としてはベテランだけど一流になりきれない男だったので、一流の脚本家を意識させるとキャラクターが立つと思い、『最高の離婚』での坂元裕二さんのセリフ、コピーライターの仲畑貴志さんの言葉などを引用させてもらいました。また実名が登場することで視聴者によりドラマを身近に感じてもらえるのではと思いました。

 また、テレビ局がテレビ朝日だったり、小津安二郎監督の『東京物語』の映像をお借りしたり。決して迷惑にならないよう心がけました。これらが成立したのは服部プロデユーサーが先方と丁寧なやりとりをしてくれた賜物(たまもの)です。

 またリリーさん、大八監督と合言葉のように、子どものころに見た、なんか変だけど心に残るドラマにしよう! というのが反映されているのだと思います。

 新・初稿が上がり、脚本をいろいろな俳優さんに読んでもらい、妻・今日子役に小林聡美さん、弁護士・堂島役に岡田将生さんが引き受けてくれました。

 こんな夢のようなキャスティングは吉田大八さんが監督するから! という一点に尽きると思います。

 あ、あと……、ビックリしないでね。

 このドラマは実話も入っていて、ちょうど、私が『天国マイレージ』という小説を書いていたころ、妻に離婚を切り出されたんです。小説では家族の絆を描いているのに、私生活は離婚に悩む中年男性……。客観的に、このときの感情が面白いと思い、『ファミリーラブストーリー』を書きました。

 脚本を書いているときに離婚が成立してしまいますが……。汗