「今は“大変だな”より“現場が楽しい”という気持ち」と、ヒロインの広瀬すず

 1961年から放送が始まった“朝ドラ”は、現在放送されている『なつぞら』で100作目を迎えた。これだけ長い間、視聴者を魅了し続けるドラマ枠はほかにはない。この歴史のある朝ドラの作り方や、制作にあたっての思いといった裏話を、『なつぞら』の磯智明チーフプロデューサー(CP)に聞いた。

広瀬すず大抜擢のワケは

「『なつぞら』の企画立ち上げは2017年の春。最初に脚本家を大森寿美男さんに決めて、彼の作家性に合うヒロイン役の俳優として、広瀬すずさんに出演依頼をしました」

 朝ドラのヒロインはオーディションで決めることが多いが、最初から広瀬に決めたことには理由があった。

「大森さんと、どういう内容にするか、ヒロインはどうするか、連動して考えた結果、表現力のある方にしたくてオーディションをしないことにしたんです」

 実力のある女優に、しっかりと演じてほしいという気持ちが強かったのだ。

「大森さんの作品の持ち味は、広がりのあるストーリー性。ときとして、心情をはっきり言葉にしないで、あくまでもストーリーのなかで感じさせることもあるため、俳優の芝居も難しいものが要求されます。

 彼が初めて手がけた朝ドラ『てるてる家族』('03年)では、ミュージカル仕立てにすることで、セリフにない感情表現を歌で表現するというやり方を行いましたが、同じことは2度できないので今回はどうしようかと考えたとき、言葉にならない感情も表現できる演技力がある広瀬すずさんが浮かびました。

 事前にスケジュールの確認やそもそも朝ドラに興味があるかなどを聞きつつ、企画書を作成し検討いただきました」

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 物語が“少女の成長記”となったわけは、前作『まんぷく』('18年)との差別化もあるという。

「朝ドラには、多感な青春期を中心に描く成長もの、幼少期から老年期までの一代記もの、夫婦ものなどいくつかのジャンルがあって、まずはそれらの中のどれにするかを考えます。『まんぷく』が夫婦ものかつ企業ものでなかったら、そうしたタイプのものをやったかもしれません。

 今回の内容に決まる前にいくつか候補企画がありました。まず、北海道を舞台にした戦後の物語で十勝の酪農とお菓子作りを中心にしたもの。もうひとつが、日本の戦後のアニメーションの話で、どちらも一長一短があったところ、大森さんがふたつをひとつにつなげるアイデアを考えてくれました