こうした疑問に対して、高砂の広報室は、

羽田空港に関しては、私たちは“手抜き工事”という認識は持っておりません。TIAT、元請けの鹿島、設計会社、下請け会社などの関係者との連絡の不備が原因だと思っております。2度とこのようなことがないように、日々の施工管理をきちんとやっていくことと、社内の再教育を徹底させていきたいと考えています」

 と説明する。

 だが、羽田空港でミスが発覚したということは、過去にほかの現場で起きている可能性も否定できない。そうしたチェックも必要なく、Aさん個人の責任と言い切れるのか。

「Aさんを訴えた民事裁判については、この春(5月下旬)に判決を控えています。裁判に支障がありますので、現時点で言及することは控えさせていただきます」(同広報室)

 さらに、2週間で終えたという補強工事については、ある業界関係者から次のような指摘がある。

「営業していない深夜の時間帯に、足場を組んで、天井を開けて、また営業時間には元に戻す作業を繰り返し行わなければいけない。2週間で61か所の補強工事はかなりのハードスケジュールになる。きちんとやってはいないのではないか」

都庁担当者「まったく知りませんでした」

 そこで補強工事の内情を確かめるために、工事に要したのべ人数と、のべ時間数を高砂に尋ねた。

「人数は日々かわっていますし、時間は待機時間などもありますので、それはいま調べてもわかりません。ですが、きちんとやっております」(同)

 疑問を晴らすまでには至らなかった。

 空調設備業界のリーディングカンパニーである高砂は日本の名だたる建造物の工事に携わってきた。不特定多数の入場者や観光客でにぎわう施設も多い。それらは、はたして大丈夫なのだろうか─。

 まず、1991年に完成した東京都庁の第2本庁舎。都財務局庁舎整備課の担当者は、

羽田空港の件はまったく知りませんでした。都庁舎に関しては、高砂さんから説明はありませんし、うちから問い合わせることもなかった」

 と話す。

高砂熱学工業が空調設備を手がけた東京都庁第2本庁舎
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 建造物については少々、説明を要する。私的な建造物については、先の鹿島のようなゼネコンなどが元請けになって、空調設備の高砂や、電気会社、給水会社、エレベーター会社などを下請けとして工事を発注する仕組みになっている。一方、都庁のような公的な建物については、ゼネコン、空調設備会社、電気会社、エレベーター会社などそれぞれが元請けとして発注される。

「完成時に高砂さんもチェックされていますし、うちもチェックしておりますので、まったく問題はありませんでした。しかしながら、東日本大震災のときに1か所、破断はありましたので、それは修復しております。建設から25年を経てからは毎年、日常的に点検をやっていますので、もちろん大丈夫です」(同財務局庁舎整備課)