また、レイザーラモンRGさんも認めているとおり、ゆりやんさんのネタは同業者からも高く評価されています。発想力、構成力、表現力のそれぞれに並外れたものがあり、ネタを見ているだけでそれが伝わってきます。英会話、ダンス、ピアノなどの特技をネタに取り入れることもあり、芸達者なのも強みです。

 もともとの発想にオリジナリティーがあって面白いうえに、それをネタの形に組み立てて表現するのも上手なのですから、文句のつけようがありません。

 近年では、渡辺直美さん、ピコ太郎のプロデュースをした古坂大魔王さんなど、国境を越えて芸人が活躍するケースが目立っています。しかし、日本である程度の成功を収めた芸人が、流暢な英語を操って英語圏でも成功を収める、というのは前例がありません。

 今後それを成し遂げられる可能性が最も高いのは、間違いなくゆりやんさんでしょう。芸人としてもパフォーマーとしても基本的な能力が高いうえに、英語力と異文化理解力も兼ね備えているからです。

将来、アカデミー賞でスピーチも?

 独特のお笑い文化が発達していて、空気を読み合うことが求められる日本のテレビでは、ゆりやんさんのわが道を行く芸風が、時に空回りしてしまうことがあります。しかし、お互いの個性を認め合う風潮があるアメリカのエンタメ業界では、彼女のそういうところがむしろポジティブに評価されるのではないかと思います。

 ゆりやんさんの持ちネタの中に、アカデミー賞のようなセレモニーの舞台上でインチキ英語でスピーチをするネタがあります。彼女の将来の夢は、本物のアカデミー賞でスピーチをして、「ネタと同じことやってるやん」と思われることだそうです。

 ゆりやんさんの潜在能力を考えると、これは決して実現不可能な絵空事ではありません。きらびやかなドレスを身にまとい、アカデミー賞の舞台に立って全米を沸かせる最初の日本人コメディアンは彼女なのかもしれません。


ラリー遠田(らりーとおだ)◎作家・ライター、お笑い評論家 主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)など著書多数。