親権はアッサリ夫に

 そもそも子どもは1日の大半を夫と接しており、香織さんより夫に懐いていた。香織さんは子どもに相手にされず家族と距離を感じていた。そのうち週末は香織さんが留守番、夫と子どもが遊びに行くように。

 ふてくされた香織さんは土日出勤の会社に転職し、ますます家庭内で孤立していった。その寂しさを紛らわすため参加したのが件のサークルで、優しくしてくれた男に気を許した……というのが不倫の経緯だった。

 香織さんが、

「あなたたちが好き勝手にして私をのけものにしてきたんじゃないの」

 と訴えかけても、夫は、

「一緒に出かけても、いつも不機嫌じゃないか」

 と返し、また、

「あなたが無視して、私は居場所がなかった」

 と吐露しても、

「居場所がなくなったのは香織のせいだろ?」

 と相手にされず、香織さんは、これ以上この家にいてもしかたがない、と感じた。

 とはいえ、夫も最初から離婚ありきではなかった。“きちんと謝り、心を入れ替え、2度と同じことをしないと誓えば結婚生活を続けてもいい”と譲歩したのだが、「夫や子どものせいで精神的に追い詰められたのに、なぜ自分のほうが頭を下げなければいけないのか」と、その申し出を退けた。

「今の家族とやり直すより、ゼロから新しく人生をやり直したい」と決意を固め、彼女のほうから別れを切り出したのだ。そして子どもの親権についても争うことなく夫に渡し、離婚が成立した。

 夫は子どもの養育費を請求しなかったので、香織さんは経済的にも独身時代に戻ったという。

 離婚が原因の父子世帯は増加傾向で「離婚したら子どもは母親に」という状況は、少しずつ変わりはじめている。


執筆/露木幸彦 離婚サポーター、行政書士、ファイナンシャルプランナー。1980年生まれ。離婚に特化した行政書士事務所を開業。著書に『イマドキの不倫事情と離婚』『男の離婚ケイカク クソ嫁からは逃げたもん勝ち なる早で!!!!!』など多数