デクスター監督にインタビュー

『ボヘミアン・ラプソディ』で最終監督を務めたデクスター・フレッチャー監督 撮影/矢島泰輔
『ボヘミアン・ラプソディ』で最終監督を務めたデクスター・フレッチャー監督 撮影/矢島泰輔
【写真】現場に来た、映画の製作総指揮を務めたエルトン・ジョン

―エルトンに対する世間一般的な印象を「すぐ癇癪を起こす、荒っぽい人間」と表現されていますが、監督ご自身もそう思っていました?

「いいえ(笑)。もちろん、そういう面もあると思います。僕自身は、そういう彼に会ったことはないですけど(笑)。でも、誰もが特に心を許している相手の前で、自分の醜いところをさらけ出したり、悪態をついたり、癇癪を起こしたりすることはあると思うんです。

 反面、自分をよく見せたいと仮面をかぶって隠してもいる。でも、エルトンの場合は、隠さずオープンにする。それは、とことんどん底にも沈み、ものすごい高みも見ている彼が行きついた境地でもある。そういった彼のすべてを見せたいというのがエルトン自身の希望でもありましたし、今回の映画を作る目的でもありました」

―改めて感じたエルトン・ジョンの魅力とは?

「子どものころから絶対音感というか、1度聴いたメロディーをピアノで完璧に弾くことができるのがすごいなと思いました。それに、あれだけひどい家庭環境で育ったのも知らなかった。今回の作品を作るうえで自分にも、エルトン自身にも非常に責任がありました。彼は、いまや、家庭を持ち、将来、子どもが大きくなったら、おそらくこの映画を見ると思うんです。  そのときに、悪い面もいい面も含めて、自分のお父さんがどれだけ偉大な人で、アーティストなのかをきちんと描き切った映画にしなければならないという義務感や責任感を常に抱きながら作品を作っていました」

―『ボヘミアン・ラプソディ』など音楽映画に大きな注目が集まっていることをどう思いますか?

「共有体験が持てるということだと思います。音楽というのは、言葉やあらゆる壁を越えてストレートに心に刺さる。そういう意味で人々を結びつける特別な力があると思うんです。その素晴らしい体験を経験できることが、劇場に足を運ばせている理由ではないでしょうか」

―今回の来日で楽しみにしていることは?

洋服が好きなので、妻と一緒にヨウジヤマモト、コム デ ギャルソン、サカイ、イッセイ ミヤケで買い物ざんまいになると思います。たぶん、日本経済に非常に貢献していると思いますよ(笑)。今日着ているシャツも、お気に入りの新しいパンツもヨウジヤマモトのものです」