消費税=不公平税のからくり

 元静岡大学教授で税理士の湖東京至さんは「消費税には致命的な欠陥がある」と言ってはばからない。庶民や中小零細企業ばかりを直撃する「不公平な税」だからだ。

 事業者の立場からみると、消費税の本質的な危険性がよくわかると湖東さんは言う。

「みなさんが物を買うときに“払う”消費税を税務署へ“納める”のは事業者です。事業者が納める消費税の金額は、年間の売り上げ高から、年間の仕入れ高などを引いて計算します。仕入れ高には、商品の仕入れ費用のほかに光熱費や交通費、家賃、通信費、広告宣伝費、外注費、派遣会社への支払いなどが含まれます。ただし、正社員へ支払う給料は入っていません。給料が多い企業ほど消費税を納める負担も大きくなるのです」

 消費税は物にかかる税金だと思っている人は少なくない。だが、実態はまるで違うと湖東さんは強調する。

「事業者視点でみれば、消費税とは年間の売り上げと人件費(給料)にかかる税金と言えます。消費税の納税額を減らしたければ、正社員を雇わないで派遣や外注を増やせばいい。仕入れ高に計上できますから。消費税には非正規労働者を増やしてしまうからくりが仕組まれているのです」

 非正規だけでなく働く人全体の賃金にも影響がおよぶ。

「非正規が増えれば、それに引きずられる形で正社員の賃金も上がらなくなります。使えるお金が減るわけですから、消費が落ち込むのは当たり前。さらに消費税には、低所得者ほど負担が重くなる逆進性の問題も指摘されています」

 消費税の原形は1954年、フランスで導入された。「その際、納税義務のある事業者が直接納める直接税なのに、消費者が負担する間接税であるかのように無理やり仕立てたのです」

 日本でも1989年に消費税がスタートするとき、物にかかる間接税を装うフランスの考え方を取り入れた。

消費税は原材料やメーカー、卸、小売りへと転嫁され、最終的に消費者が払う税金だと信じられてきました。消費者は、自分で消費税を負担しているように錯覚しています」

 消費税の仕組みが裁判になったことがある。1990年、原告である消費者側は、当時3%だったコンビニのレシートを示し、消費者が払った消費税がそのまま税務署に納められないのはおかしいとして、東京地裁へ訴えた。

「判決は、消費者は消費税を負担していないという内容でした。消費者の納税者はあくまで事業者であって、消費者が負担しているのは消費税ではなく、商品やサービスの提供に対する“価格の一部”であると裁判所は述べたのです。消費税が間接税ではないことを証明しています」

 では、なぜ消費税の導入にあたり、わざわざ間接税を装うようなまねをしたのか。

「輸出企業が消費税の還付金を受けられるようにするため。『輸出戻し税』や『輸出還付金』と呼ばれる制度です。これを使えば、消費税を1度も納めたことがなくても、消費税が税務署から還付されます」

 企業が輸出するとき、海外で販売される商品に日本の消費税をかけることはできない。輸出品に消費税をかけないという国際的な決まりがあるからだ。消費税非課税で販売することになるが、それでは国内で販売したときに受け取れるはずの消費税分を企業が負担することになる。そのため輸出還付金として消費税分が企業に還付されるわけだ。