年金は今後、2割減!?

 現在、年金生活者は「所得代替率」(現役世代の収入に対する割合)が6割程度の年金をもらっていて、やがては5割くらいになると「財政検証」には書かれている。実際にはどうなるのか、そこが最も気になるところだ。

「財政検証に出てくる『所得代替率』というのは、現役男子の平均手取り賃金に対して、モデル世帯が受け取る年金が何割くらいか、という数字です。現在の所得代替率は6割で、今後は5割まで減らして、あとはなんとか維持しようといっています。6が5になるわけですから、約2割減です。

  ただ、この『モデル世帯』というのが曲者です。これは、40万円くらいの賃金で40年働いた夫に、40年専業主婦で支えた妻、いずれも未加入期間なしというケースです。そんな人、実際にどのくらいいますか?

 さらに「共働き世帯や非正規雇用が増え、正社員と専業主婦の夫婦というモデル世帯自体が平均的モデルではなくなってきていることにも注意を払うべき」と伊藤教授。

「大多数の人はモデル世帯の加入条件に満たないわけですから、モデル世帯の所得代替率が5割という水準なら、実際にもらえるのは現役世代の4割とか、下手すると3割水準という話になるはずです。自営業夫婦だと老齢基礎年金しかもらえないから、さらに悲惨。現時点で2人合わせて月額13万円、これが将来的には2人合わせて現在価値でいう9万円ぐらいになっちゃう。

 そもそもモデル世帯に近い夫婦だって、楽観できません。いま22万円もらっているのが、2割ぐらい減らされるんですよ。現在価値に置き換えると20年後には17万円台になる」

 北村さんが年金見込額について「現在価値に置き換えると」というのは、ワケがある。財政検証で発表された年金見込額が、物価や賃金が上昇するという甘い予測をもとに水増しされた金額だからだ。

「発表されたうわべの金額を見て安心してはダメ。所得代替率をもとに、いまの物価水準のままならいくらになるか計算し直さなくては」

 年金が2割減るとなると、「老後2000万円不足」どころではすまなくなりそう。

「そもそも2000万円という数字は、総務省の家計調査をもとに、高齢夫婦の生活費が月26万ぐらいかかる、一方でモデル世帯の年金が月額22万だから4万足りないという計算をもとに出たものです。これが今後、年金が17万ぐらいに減るので、プラス5万、合わせて月9万円足りないという話になるわけです。

 月9万不足なら1年で108万、夫が亡くなるまでの20年間で2200万円ぐらい不足します。その先の妻のひとり暮らしを考えると、2500万~3000万円も足りないわけです。モデル世帯でさえこの金額ですから、ましてや非正規雇用の多い氷河期世代が老後を迎えるころには、国民年金のみという人も多いはず。こうした人は3000万~4000万円足りなくなるのでは?」

 北村さんが試算した今後の年金見込額を記事の最後に掲載したので参考にしてほしい。