内面をとやかく言われるのは美少女の宿命

 それでは、なぜ広瀬の性格がネットで物議をかもすかと言えば、これは美少女の宿命だと思うのです。広瀬すずだけでなく歴代のスターも、もてはやされる一方で、内面をとやかく言われることはよくあります。

 例えば、女優・広末涼子。透明感のある美貌で清純派として人気を集めましたが、10代後半から、スキャンダルに見舞われます。モデル・村田充(現在の神田沙也加の夫です)、俳優・伊勢谷友介など、次々に熱愛が発覚。短期間で恋愛を繰り返す彼女に対し、「広末は肉を食べると性欲が増してしまうので、事務所から肉禁止令が出ている」という説が都市伝説的に出回ったことがありました。

 冷静に考えてみれば、広末本人が清純派を名乗ったわけではありませんし、清純派であったとしても恋愛くらいするでしょう。にもかかわらず、彼女が叩かれたのは、私たちが持つ“バイアス”のためではないでしょうか。

 私たちは無意識にバイアスをかけて、世の中や人を見ています。なので、同じ行動や発言をしても、Aさんは怒られるのに、Bさんは何も言われないという現象が起こるのは、このためです。

 例えば、年収1億円の人が「幸せはカネでは買えない」と言ったなら、1億稼ぐ能力に加え、人間的な深みもあると好意的に受け止められるのではないでしょうか。反対に、健康面などに問題がなく、働けるのに仕事をしていない人が「幸せはカネでは買えない」と言ったら、まずは働けよ、口ばかり達者なやつだと思われてしまう。一般的に言われるところの性格というのは、言動ではなく、社会的なポジションから作られることも多いのです。

 女性の場合は、外見も大きなバイアスの要因となります。アメリカのコーネル大学の研究発表によると、陪審制度を取るアメリカでは「被告人が美しい女性の場合、判決に影響する」という研究結果が出ているそうです。「美人は内面もよい」というバイアスがあるから、このような結果になるのだと思います。

 このバイアスのおかげで、広末や広瀬のような美少女はデビュー当初はあがめられますが、その一方で、「美人は性悪に違いない」という正反対のバイアスも存在するのです。

 上述した「被告が美しい女性の場合、判決に影響する」ケースには例外があり、女性が結婚詐欺を働いた場合、非美人が同じ罪を犯したときよりも、陪審員の心象がより悪くなることが明らかになっています。

 美少女だからこそ持ち上げられ、ほころびのようなものを見せれば叩かれる。二人が経験したバッシングは、“美少女税”と言えるのではないでしょうか。