アートを堪能した後は温泉でほっこりと

 スタッフの労に感謝しつつ、さっそく作品に目を向けると、緑色のアフロ頭で涙を流す「嘆きの天使」(フランソワ=ザビエ、クロード・ラランヌ)が超インパクト!

「彫刻と同じようなポーズをとって撮影するのが流行っているようですよ」

大きな「目玉焼きのオブジェ」 撮影/渡邉智裕
大きな「目玉焼きのオブジェ」 撮影/渡邉智裕
【写真】ちょっとシュールな、彫刻の森の作品たち

 定番彫刻に加えて、随所に新たな展示も見られるのだが、特に若者に人気なのが「目玉焼きのオブジェ」。しょうゆやソースになった気分で寝てみたり、大きな黄身に食らいついてみたり、この日もグループでワイワイ撮っていた。

 片や'75年に作られた「幸せをよぶシンフォニー彫刻」(カブリエル・ロアール)は、スマートフォンCMに登場して再ブレイク中。そのステンドグラスに囲まれた幻想的な塔を上れば、屋上から箱根の山々を大パノラマで望める。これはCMでは映らなかった、大自然の絵画だ。

 そして「昭和から一気に令和に変わったというくらい、一新しました(笑)」のが、ピカソ館。7月に全面リニューアルされた内観は、木目調の明るいインテリアに統一されてLEDライトが照らすおしゃれ空間に様変わり。真新しい館内で見ると、作品のイメージまでもが変わって見えるから不思議。紹介されるピカソの言葉を聞いて、偉大な芸術家に思いを馳せよう。

増設された箱根温泉の足湯でほっこり 撮影/渡邉智裕
増設された箱根温泉の足湯でほっこり 撮影/渡邉智裕

 一方で、彫刻以外のお楽しみスポットが増えているのをご存じだろうか。子どもたちの体験型アート作品「ネットの森」は気分転換にはもってこいだし、館内散策に少々お疲れならば、

「源泉掛け流しの天然温泉を引いています。温泉地ならではの施設だと思います」という、'04年に新設した箱根の美術館だから堪能できる足湯でリラックスタイム。

 ひと息ついたら隣のミュージアムカフェへ。足湯後に、開放感のあるくつろぎ空間で飲む、彫刻の森オリジナルラベルのクラフトビールは最高! つい長居しちゃいそう。

 50年の歳月において、作品のクオリティーの維持に努め、なおかつ時代に沿ってアップデートしてきた彫刻の森。箱根の紅葉が色づく季節に、いつまでも色あせない美術館を訪れてはいかが?


彫刻の森美術館 THE HAKONE OPENーAIR MUSEUM
 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町ニノ平1121 開館時間9:00〜17:00 無休 *入館は閉館の30分前まで(11月30日より箱根ナイトミュージアム開催16:45~18:00)一般1600円 大学生・高校生1200円 中学生・小学生800円
TEL:0460-82-1161 https://www.hakone-oam.or.jp/ 

「ピカソ館」 開館35年で初のリニューアル
 20世紀を代表するスペインの芸術家パブロ・ピカソの作品を専門に展示するために、'84年に開館したピカソ館。50周年を記念して、7月に初めて内装と設備が全面リニューアルされた。箱根らしい、木目調のナチュラル空間に生まれ変わり、3つに分類された展示空間は開放的で明るく鑑賞しやすい。現在、124点(うち、ピカソ作品103点)を展示するテーマ展『ピカソの挑戦~かたちの変貌~』(2021年3月まで)を開催中。

取材・文/山崎ますみ