11月6日に東京・杉並区で覚せい剤を所持していたとして現行犯逮捕された田代まさし。9年ぶり5度目だという。

 さっそくネット民はその逮捕歴を高校野球になぞらえて《格子園出場おめでとう!》とイジり出しているわけだが、この緊張感のなさは「もはや見慣れた光景なので驚きもへったくれもない」ということのあらわれか。

 あまりに捕まりすぎているということで、“逮捕年表”なるものを作って報じるメディアも多かった。作り終えたとき、若干の達成感に包まれるんじゃないかくらいの長さ。

 覚せい剤での逮捕は4度目ということらしいが、今回は笑いごとで済まされない点が多い。'14年に出所してから薬物依存のリハビリ施設である『ダルク』のスタッフとして社会的な活動をしていたからだ。再犯防止のための講演に登壇するなど、薬物の危険を身をもって説いてきた。

「この人なら更生できるのかも……」

 世間も信じはじめた矢先、またも“格子園”出場の切符を手にしたわけである。『ダルク』の関係者や、元薬物中毒者たちに及ぼす悪影響も少なくないだろう。

他人を手助けできているという自負

 田代が『ダルク』のスタッフとなってからしばらく、いたって真面目に啓蒙活動を行なっていたことがわかる資料がある。雑誌のインタビューで『依存の恐ろしさ』について伝えようとするさまは切実そのものだった。

これがクスリの魔力です。“1回でも多すぎて100回でも足りない”と言われているのが覚せい剤です》(『週刊大衆』'17年12月25日号)

ダルクのプログラムは1日3回、経験者同士がミーティングを重ね、「just for today」を合言葉に今日一日やめることを繰り返す。そう説明して「やめ続ける自信はないですが、今日一日やめる努力を怠らないとお約束できるようになりました」と取材に答えたら、記事の見出しに「田代まさし、開口一番、今日はやってません」と書かれちゃう》(『世界』'16年6月)

 芸能人である発信力を活かし、薬物依存の実態と、もがき苦しんでいる現状を、そして毎日が戦いなのだということを切に訴えてきたのだ。インタビューで田代は最後にこう締めている。

今、私の回復を支えているものは、薬物依存症で世間からダメだと思われていた自分でも、他人の回復を手助けできているという自負です。そうした自分の体験を、もっと多くの人々に伝えていければと考えています》(同前)