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 疲れや不調って、 「しかたない」 「こんなもんさ」と やりすごしがち。 でも、原因や治す方法 ちゃんとあったら……、 それ、知りたくありません?

「疲れ」「だるい」は主観でしかない

「疲れが取れない」「なんだか身体がだるい、重い」というのは、あくまでも主観、つまり自分の感じ方。血液や尿を検査しても数値には出ないし、症状が見えないからMRIやCTの検査もできない。つまり、証拠がないのだ。ここにやっかいさが潜んでいる、と東京女子医科大学病院総合診療科の部長代行・島本健臨床教授は言う。

「昔から、『疲れる』『だるい、重い』という主訴は医師にとって、とても難しい。データにも出ないし、はっきりした定義もない。判断が難しいのです」

 身体症状があればまだ手がかりになるが、メンタル病気の場合はそれすらない場合も。だからこそ、原因を探っていくには、ある程度の時間とプロセスが必要となる。

 六番町メンタルクリニック院長・海老澤尚先生も、

メンタル病気の可能性があっても、いきなり診断することはできません。メンタルが原因ではない病気の可能性が本当にないのか、きちんと段階を追って調べる必要があるからです」

 ところが、病院に行くほどの疲れやだるさ、重さを感じている当人にとってみれば、「病院に来たのだからすぐ診断してほしい」「早く何が原因か突き止めたい」という気持ちでいっぱい。先に述べたように、巷には脅かしのような情報があふれているので、不安だけがどんどんつのっていく。

 その結果、起きてしまうのが、ドクターショッピングやインターネット情報をうのみにした自己診断だろう。本人にしてみれば、よりよい医療を、より確かな情報を求めてやっているのだが、結局はなんらメリットにならないことも多い。

病院を転々とする、というのは患者さんが納得していないということでしょう? 納得できるように話をよく聞く、診療の進め方をていねいに伝える、という医師側の配慮が足りないとも考えられる。でも、パッと見てパッと診断するのがいい医師というわけではありませんよ」(島本先生)

 不安や焦りを早く解決したいあまり、なかなか診断を下さない医師に見切りをつけてみたり、あるいは評判の高い大病院に行くのがいちばんと思い込みがち。でも、そんなことを続けていると、いつでもその場しのぎの医療を受けるはめになるのだ。

 また今回、取材した先生方がともに警鐘を鳴らしていたのがインターネット情報。あきらかに間違えていたり、古くて今は通用しないという内容も散見されるのに、それを信じて不安になったり、思い込んで頑なになったりしている患者も多いそう。

「せめて医師や病院、製薬会社など信頼できる発信元かどうかチェックして」(島本先生)

 身近に信頼できるかかりつけ医を持つなど、長い目で見て、いつも安心できる医療を受けられるよう、私たち自身の意識改革も必要。これから超高齢化を迎えるにあたり、そろそろ真剣に考え直してみるべきかもしれない。次のページでは、病気の診断における理想のプロセスについてみていこう。