クラウドファンディングで資金集め

 長い話し合いを経て、当時の駅伝主将を含め約10名が離れていった。

「本気で箱根駅伝を目指す子だけが残りました。ウチは雑務を担うマネージャーがいないので、試合の申し込み、靴のオーダー、合宿手配などもすべて自分たちでやっています。寮はなく、食事も当番制。そういう意味では人が抜けて大変でしたが、“箱根のためなら”と、みんながひとつになれた。意識が変わり、練習のクオリティーが上がり、弘山勉監督との歯車もかみ合っていきました」

 国立大ゆえ、支援が手厚い私立大学と違って大学からの活動資金は0円。そこで弘山監督が始めたのがクラウドファンディングだった。強化費として年間300万円を集めたという。そんな強豪校にはない苦労を抱える筑波大。かつ川瀬選手は、医学群での勉強も。

「朝練は6時からですが、自分は5時半からやったり。16時45分からの夕方練習も、僕は実習が18時までだったりするので。19時からやるなど、平日はだいたい1人でやっています。合宿には行けなかったり、行けても夜は勉強してますね

 医学群は再履修がなく、テストを落とすと即、留年。気を抜ける科目はひとつもない。

「特にキツかったのは、2年の死体解剖実習。集中力を必要とする作業を1日中やるうえ、6週間も続く。心も病みます(笑)」

 4年の後期からは大学病院での実習も始まり、ますます時間がなく“生きるのが精いっぱい”だと笑う。

「筑波はトップアスリートがリハビリに来るほどのスポーツ医学の権威。整形外科医として、アスリートのリハビリやコンディショニングを支えられる医者になりたいんです」

 そしてほどなく、もうひとつの夢が叶う。

「せっかくの箱根なので、出るだけでは終わりたくない。アップダウンは得意なので、準エース区間の4区で戦い抜きたい。個人順位はひとケタ、シード権が見える位置で5区につなぎたいです。何より絶対に襷を途切れさせるわけにはいかない。目指すは総合10位、シード権の獲得です!

筑波大が26年ぶりの本戦出場を決め、川瀬選手も胴上げされた
筑波大が26年ぶりの本戦出場を決め、川瀬選手も胴上げされた

【PROFILE】
筑波大学医学群医学類5年 川瀬宙夢選手 ◎かわせひろむ。愛知県刈谷市出身。刈谷高校3年時にインターハイ出場。筑波大学医学群で整形外科医を目指している。昨年は駅伝主将を務めた