元大乃国の芝田山親方
元大乃国の芝田山親方
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 芝田山広報部長のコメントも、今回は稽古中に熱くなって起こった突発的なもので、上の者が下の者に暴力をふるう過去の事案とは違い、真剣な稽古の中で起こったことで、あまり厳しい処分にするとほかの力士たちの稽古が委縮してしまうと説明し、現実的な判断になった。

 相撲は格闘技なのだから稽古中に熱くなってケンカになっても当り前、少しぐらいの殴り合いだって構わないと相撲ファンの私は見ていたが、いえいえ、それは違いますと、協会はそういう見方を否定した。

 稽古中とはいえ、暴力暴力であると判断を下したことわけで、そこに注目したい。

ヒートアップする白鵬批判

 スポーツ界に於ける暴力について思い出すのは、一昨年、体操界の指導者による暴力問題が報道されたときに、タレントの武井壮さんがそれに関してツイートをしていて、「スポーツの世界から汚い物、恥ずべき蛮行を全部無くして誰からも敬愛される紳士的で最高で最強の文化を作ろうぜ!」(2018年9月11日)と書いていた。「誰からも敬愛される紳士的で最高で最強の文化」ってなるほど、と思ったのを覚えていて、今、相撲界が目指しているのもここなのか! と改めて思わされている。

 江戸時代に興行相撲が始まったころ、相撲場は荒れに荒れ、見ているほうもやるほうもケンカが日常茶飯事、暴力が横行していたと読んだことがある。おすもうさんになる人も、荒くれ者で無法者が多かったとかも。

 それからずっと、相撲の場ではシゴキとか暴力が当たり前で、ひと昔前の稽古風景のビデオなどを見ると、竹刀や箒でバンバン殴って、その箒が割れたりするのもよくあることだった。でも、それはもう絶対にダメ、些細(ささい)なことと思われるようなものでも、終わりにしなければいけないんだという決意が今回よく分かった。昔からあることだから、という言葉はもう通用しないと私自身も、わかりましたと頷(うなず)くほかはない。

 しかし今回の処分や伝え方に納得しない人たちも多くいて、記事に連なるコメント欄には石浦や相撲協会、さらにケンカの仲裁に入った横綱白鵬への罵倒が連なる。ツイッターなども同様で、〈石浦を追放せよ〉との罵倒や、〈裏の力が働いている〉といった陰謀論などが渦巻いてる。相変わらずだなーと、それらを読んでいるが、こういう人たちは常に怒っていて、常に罵倒し続けているのだ。

 例えば昨年末には白鵬の「かち上げ」について、延々罵倒し続けていた。というか、その延長としてのこの事件を捉えている人も多く、全然関係ないのに? とはなはだ疑問だ。

 白鵬への批判は最近では、それこそ“ヒートアップ”することが多く、集団イジメのように映る。「かち上げ」の件のときには、ヤフーが意識調査に「白鵬のかち上げどう思う?」などといきなり取り上げた。そして80%以上が「問題ある」に投票していたが、大相撲を見ているのかも分からない一般の人たちに、それだけ設問しての結果に何の意味があるのだろうか? 

 白鵬のかち上げについては横綱審議委員会が「見苦しい」「やりすぎ」「横綱相撲ではない」として「相撲協会に指導してほしい」と話したが、協会側は「相撲の手のひとつで、特に指導することはない」と答申し、問題はないとされていたはずだ。