舞台『弱虫ペダル』シリーズなどで共演した俳優・鈴木拡樹さん(34)は、稽古中も本番中も常に「筋トレ」に励む姿が忘れられないという。

「体力的にハードな舞台だったのに、稽古中や出演シーン以外は、ずっと筋トレをしているんです。それこそ演出家からダメ出しされている瞬間でさえ、無意識のうちに身体を動かしていることも(笑)。舞台のときは、出番の前に衣裳や髪型のチェックを自分で行うことがありますが、英治さんはそれらに加えて、ボディチェックも欠かしませんでした」

 ロードレースを舞台とした作品で、ボディラインのわかる衣裳であるがゆえに、観客に最上の姿を見せたいという気持ちの表れだろう。

「人に見られるという意識がしっかりあるので、とても舞台向きだと思います」と前出の荒木田さんも言う。

「30の壁」と焦り

 端正な顔立ちや堂々とした体躯から、無口で威厳のあるキャプテンや頼れるリーダー的な役柄を演じることも多かったが、自身は生まれ育った大阪のエッセンスを色濃く持ち、「人を楽しませたい、喜ばせたい」という気持ちがとてつもなく強い。その気持ちは、子どものころから一貫して変わっていない。それをかなえられるいちばんの道が、「俳優」だったのだ。まさに天職といえるだろう。

 その姿勢は、プライベートでも同じ。20年近い付き合いになる、友人の難波一信さん(39)は、その素顔をこう明かしてくれた。

「英治さんはとにかく周囲を笑わせることが大好きで、ひたすらおもしろい話をして場を盛り上げてくれる。だから、仲間の集まりでは圧倒的な人気者でしたね」

 お金と体力に余裕のある20代のころは、なじみの店で何日もぶっ続けで飲み明かしたこともあったという。サービス精神の旺盛さは、いついかなるときも揺るがなかった。

 周囲からは自己を貫き、充実したプライベートとともに、着実に俳優としての道を邁進しているように映った滝川さん。しかし、内心では大きな鬱屈を抱えていた。

 そのモヤモヤした気持ちは、「30の壁」から続いていたという。

 多くの俳優にとって、30歳近くになると訪れる、それまでとの状況の変化。滝川さんも長年続いたCM契約が終了したり、出演依頼が減ったりし、徐々に焦りを感じるようになっていく。これまでの俳優業で得た蓄えを切り崩しながら、事務所を移籍し、スポーツトレーナーの資格を取るなど、必死に模索し続ける時期が続く。俳優を辞める人や、結婚していく友人を見ていて、俳優という安定しない職業を続けていく未来が見えなくなっていた。

 だがこのころ、友人の難波さんは、陰で努力する姿を見ていた。

「あれだけ飲みに出ていた滝川さんが、仕事での身体作りのために、潔くお酒を飲まなくなりました。ある意味がんこで、弱みを見せたくないという美学がある。仕事の悩みを口にしないし、黙々と努力して解決しようとするんです」