突然起きた、不慮の事故

 たゆまぬ努力や、新たに所属した事務所の尽力のおかげで、数年かけて再び仕事は上向き始めた。2017年は主演舞台から幕を開け、出演予定の作品が次々と並んでいた。「30の壁」を越えた─本人も周囲もそうとらえていた矢先、突然の事故が起こったのだった。

 2017年9月15日、ドラマ『弱虫ペダル Season2』(BSスカパー!)の撮影に臨んだ滝川さんは、山中の下り坂をロードバイクで走っている最中、転倒して道路にたたきつけられてしまう。直後、駆け寄ったスタッフに、とっさに、

「僕の足はありますか?」

 と尋ねずにいられないほど、一瞬にして全身の感覚が失われていた。

 すぐにドクターヘリで病院に緊急搬送され、手術により一命をとりとめたものの身体に受けたダメージは大きく、「脊髄損傷」の診断が下った。

のどを切開し、人工呼吸器をつけていた。声が出せないため、五十音表を使い、意思を伝えようとしたが、うまくいかず言葉を飲み込むことも
のどを切開し、人工呼吸器をつけていた。声が出せないため、五十音表を使い、意思を伝えようとしたが、うまくいかず言葉を飲み込むことも
【写真】2歳のころの滝川さん、事故後に人口呼吸器を付けた姿

 首から下はほぼ動かせず、感覚のない状態。体幹がきかないため、姿勢を保つことも難しい。1度、体勢が崩れてしまえば、介助なしには立て直せない。しびれや痛み、呼吸しづらさ、体温調節の難しさ、自律神経の乱れなど、現在も続くさまざまな身体症状を抱えることとなった。

「どうして……」

 困難な呼吸の中で、絶望の淵に沈みそうになった夜も、何度もあった。一時期は、のどを切開して人工呼吸器をつけることで、俳優の商売道具である「声」を失った。

 アクションもこなせる人気俳優から、車いすでの制約の多い生活へ─。あまりに過酷な境遇の変化も、しかし、滝川さんから不屈の闘志と生来の明るさを完全に奪うことはなかった。

 容体が落ち着いて後、滝川さんは専門施設でリハビリを開始する。残された身体機能を維持するために、毎日何時間も行われるさまざまな訓練。中には、ときにうめき声を上げずにいられないほどの苦痛を伴うものもある。

リハビリ施設にて、身体の機能回復のためにリハビリを行う。時には、強い痛みが伴うことも
リハビリ施設にて、身体の機能回復のためにリハビリを行う。時には、強い痛みが伴うことも

 だが、滝川さんはその姿を余すところなく記録してもらうべく、自ら希望して密着ドキュメンタリーの撮影を依頼した。後に『滝川英治ドキュメンタリー「それでも、前へ」』(BSスカパー!)と題して無料放送されたそれは、心配していたファンはもちろん、さまざまな障害のある人々にも大きな勇気と感動を与えることとなる。

 友人の難波さんは、前向きにリハビリに励む滝川さんの姿に驚かされたと語る。

「どんなメンタルをしていたらあのように気丈にふるまえるのか不思議なほど、弱音を耳にしたことはありません。もしも僕が彼の立場だったら、とても同じようにはできないでしょうね……」