実は傷ついている子供たち

 心配なのは大人だけではない。突然、休校になって自宅待機を強いられている小・中・高校生もあぶない。春のセンバツ出場をたたれた球児たちは「夏の甲子園を目指します」と言うしかなかった。

 新潟青陵大学大学院の碓井真史教授(臨床心理学)は、「何でもないように見えて、実は傷ついている子もいるんです」と訴える。

卒業式が中止・縮小されたり、新年度のクラス替えを控えて“最後の時間”を奪われた子がいます。先生やいまのクラスが大好きな子ほど喪失感は大きい。繊細な子、変化についていくのに少し時間がかかる子にも目を配って、周囲の大人が話を聞いてあげてほしい」

 スクールカウンセラーでもある碓井教授は、“がんばりやさん”の子どもが置かれがちな状況にも目を向ける。

「能力もやる気もあるから周囲の大人から頼られやすいんです。しっかり者のお姉ちゃんが留守宅で毎日、小さな弟や妹の面倒を見ていたりする。“小さなお母さん”として頑張るわけですが、そろそろ“いつもありがとうね”と特別に褒めて、アイスの1本でも買ってあげてはどうでしょうか」

 子どももメンタルを病むことはあるが、親からすればいきなり精神科を受診するのはハードルが高い。

 広島市の小児科医院『女医によるファミリークリニック』の竹中美恵子院長は、そんな親のために日本小児科医会が養成する「子どもの心」相談医としても活動する。

「ストレスがひどく、壁を物で叩いて穴をあけてしまうお子さんがいます。外で遊ばないから体力があり余って、夜、眠れない子もいます。

 逆にやる気が出なくて、ずっと寝ている子もいるようです。寝てばかりというのも不健康ですよね。あるいは、うんざりするほど宿題が出ていてストレスの要因になっているケースもありました」

 同じ勉強時間であっても、学校で先生に教えてもらうのと、自分で宿題をやるのとでは「必要とする集中力が異なる」(竹中院長)という。

 外で遊べば大人から白い目で見られ、ささやかな楽しみだった週末の外食もなくなった。部活動の大会中止などで目標を失った子もいる。

 しかし、仕事に加えて子どもの面倒に頭を悩ませる親は少なくない。イライラすることもあるだろう。竹中院長は、

「子どもが自宅にいるので急にお弁当づくりが増えた母親はストレスを感じています。なかなか仕事へ行けなくなったシングルマザーは収入が減り、“食べ物の味がしないのでよく食べられない”と精神的に参っている。体重がどんどん落ちて肉体的にも危ない状態です」と実態を明かす。

 追い込まれた親はどうすればいいのか。

 前出の勝田教授は「孤独はメンタルヘルスの大きなリスク。周囲から支援のない孤独はさまざまな疾患のリスク要因になる」と指摘。

 前出の碓井教授は、

「親がどっしりと構えられれば望ましいが、できなくても自分を責めないでください。まずは親が自分の心を守ること。近所の人や友人がグチを聞いてあげるなどフォローしてあげてほしい」

 とアドバイスする。

 ウイルスと同様、厄介な“敵”が自分や家族の中に潜んでいるかもしれない─。