「ついに映画もダメか……」

 政府の『緊急事態宣言』が芸能界全体に波紋を広げているが、これまで3月末以降の週末を除き、開いてきた映画館までついに閉鎖に追い込まれてしまった。

 それ以前も、三密を避けるためにコンサートや演劇の自粛などが行われていたが、『緊急事態宣言』により、事態は一変した。

「5月6日まで、と日にちが切られたことが大きいですね。そのことによって、5月3日に初日を迎えるはずだった市川團十郎の襲名披露興行が延期にせざるを得なくなった」

 とスポーツ紙芸能担当記者。

映画記者の嘆き

 ほかにもテレビ局は番組収録やロケを中止し、東日本大震災の際にも休まなかった都内の寄席も木戸を閉じることを決めた。なかでも大きく動いたのは映画業界だったという。

「多くの劇場が閉まったりする中で、映画館だけは普通に開いていたんです。ところがこれが一挙に休館に舵を取ったことで波紋は広がりました。ゴールデンウィークの5月1日に公開予定だった、長澤まさみ東出昌大主演の『コンフィデンスマンJP  プリンセス編』などの話題作が次々に公開延期になりました。東宝の試写室のポスターには、公開日の上に『近日公開』というシールが張られていましたよ」

 と映画サイト記者。続けて、

「テレビのバラエティー番組では、すでに5月公開映画の宣伝を絡めた番組が放送されていますが、ちょっと思惑が外れたという感じ。致し方ないんでしょうけどね」

 映画館同様、公開前の作品のレビューを書くために、メディアの人間が見るマスコミ試写が行われる試写室も全面的に閉鎖になった。密室でありながらも、客席を一席ずつ開けるなどして、コロナ禍のさなか密かに試写を行っていたが、これもダメに……。

「実はこれは打撃で、映画記者はみんな困っていますよ。というのも、多くの新聞には、週末公開の映画のレビューを書くスペースが大きく設けられていますが、それをどうやって作ればいいんだ! という嘆きです。記事を書くにしても、もう材料がないわけです。雑誌のレビューなら少し先のものを取り上げても違和感がありませんが、新聞のレビューは、大抵、週末の公開ぶんを取り上げていますからね」(宣伝会社スタッフ)

 スポーツ紙の芸能面、一般紙の文化面の構成材料になる放送(テレビ・ラジオ)・音楽・演劇・映画がほぼ全滅になった今、メディアの紙面づくりも苦境に立たされている。

<取材・文/薮入うらら>