4月12日の安倍晋三首相(65)が公式ツイッターで、シンガーソングライターの星野源のコラボ動画を投稿した。

友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています。そして、今この瞬間も、過酷を極める現場で奮闘して下さっている、医療従事者の皆さんの負担の軽減につながります》

 と、コメントを添えるも瞬く間に炎上し、「何様つもり!」「空気の読めない人間」などと批判が殺到。自粛ストレスを溜める世間からの風当たりは強かったようだ。

星野のコラボ動画の目的は

 星野のコラボ動画は大泉洋渡辺直美、女優の石田ゆり子が参加し話題を集めていたが、これだけの著名人の心を動かした「#うちで踊ろう」の魅力は星野源の歌声だけではない。彼の人間性そのものが表れている。

 また「#うちで踊ろう」には英語で『Dancing on the inside』というタイトルが付けられており、「うち」は「」ではなく「」を意味していると言われている。自粛要請期間でも家にいられないリスクを背負った職業の人もいる中、「Home」ではなく「inside」を使ったのは心の中で歌ったり踊ったりできるという彼なりの気遣いだ。

 一聴すると明るく思えるのだが、歌詞には「生きてまた会おう」「生きて踊ろう」と重い言葉が続く。それは過去の大病が起因しているのだろう。

 星野はこれまでに2度、くも膜下出血という重い病気で入院。レコーディング中に突然、頭を殴られたような痛みに襲われ、脳動脈瘤の破裂という重篤な状態で手術医は後遺症の可能性も示唆したほどだった。早期対処のおかげもあり、なんとか手術は成功するも、激しい頭痛に悩まされ3日間も眠れない日が続いた。

 その後、大きな後遺症もなく無事に退院したと思いきや、またしてもくも膜下出血を再発。死の恐怖から解放された矢先に、再び病魔は彼に襲いかかった。その絶望は計り知れないだろう。しかし彼は生への執念を見せ、奇跡的な回復を遂げる。

 かつて、自身のエッセイ『蘇える変態』(マガジンハウス)で、

《今すぐにでもベッドの頭上にある窓から飛び降りたい。早く死んでしまいたい》

 と綴っているが、「生きる」ということを考え抜いた末に、ポップソングに乗せて“生の大切さ“を届けることを選んだのだ。

 代表的なもので病後に出したのがドラマ『心がポキッとね』(フジテレビ系)の主題歌で話題にもなった『SUN』だ。冒頭で〈壊れそうな夜が明けて 空は晴れたよう〉という歌い出しや、後半〈僕たちはいつか終わるから〉のようにポップなメロディーに乗せ、リアルなメッセージを伝えている。

 そしてご存じのとおり、現在も第一線で音楽活動を続けているわけだ。

 彼の明るい歌声と曲調からは想像することができないが、命の危機を経験した過去を持つ星野源だからこそ、今回のコラボ動画にもその想いが表れている。多くの命を救いたいという気持ちが、あえて重い言葉を選んだ理由なのかもしれない。

 星野の想いが形となって世界に広まり、新型コロナウイルス収束してくれることを願うとともに、多くのファンを魅了する姿をまたみせてほしい。