しかし、その練馬区にある、別の区立保育園保育士をする女性は「必要ならば仕方なく保育しますが、自分も人間なので、本当は感染が怖いです」と正直な気持ちを吐露する。そしてサポートをきちんとしてほしいと願う。

「開園していても特別手当などもありません。安倍首相は『保育現場の方たちには頑張っていただいて』と感謝の言葉を言いますが、身体を張ってることをもっと見てもらって、きちんとした保障をしてほしいです。保育園ではパートの方などは年休をとって休んでいる人もいます。もっとしっかりサポートしてほしいですし、マスクも消毒薬もうちは不十分です」

ないがしろにされがちな乳幼児問題

 実は練馬区では保育士やお母さんたちの間で、閉園を求める署名運動が起こっている。練馬区議の高口ようこさんが練馬区に提出した「保育園・学童の現場支援を求める要望書」には現場任せにしている練馬区に対して、保育士さんたちから「練馬区ではもう保育をしたくない」「練馬区から見捨てられた」といった声が寄せられているとある。また保育園が開園しているからお母さんたちの在宅ワークが認められなかったり、また自粛しても保育料の返還もなかったことも大きな問題だ(が、やっと最近、返還が決まったそうだ)。

 今や、閉園しても問題が山積、開園しても問題が山積だ。

 しかし、こういう声もある。都内に住む夫婦共に会社員の女性だ。

「私自身テレワークなので子どもは登園自粛しています。感染予防や保育士の方々の負担軽減を考えると致し方ないのかな?と思いますが、小学生を含めて3人の子どもたちがいる状態では満足に仕事をすることはできません。でもいちばんの不安は、子どもたちが家庭内という狭い中で過ごすことで、集団でしか得られない学びの経験ができないことです。親との関係だけでは親子共々に逃げ場もなく、限界もあります。しかも家庭環境によって子どもたちの間に格差が生じてしまい、再開後に不安があります。どうか後手後手ではなく、早めの対応や補償をしっかり練ってほしいです

 また、先ほどの、開園している練馬区の保育園で働く保育士の女性も、

「自粛をしていることで自宅にいて、本来保育を受ける必要がある子どもたちが在宅で家にこもり、大切なこの時期の成長や発達がとても心配になる」と、話す。

 都内の閉園中の小規模保育園で働く前述の保育士さんも、

「親御さんとの時間が増えていいだろうと言われますが、それがある程度の距離感があればいいけれども、常に密接だとお互いにイライラするし、しかも公園の遊具も使えない、あれもダメこれもダメの中でみなさんどうしているんだろう? と親御さんもお子さんも両方のことが心配になります」と言う。

 幼い子どもたちにとって、幼稚園や保育園はただ時間を過ごすだけの場ではない。集団生活の中からさまざまなことを感じ、学び、反復していく場だ。大人にとっての1か月や2か月はアッという間だが、2、3~5才ぐらいの子どもにとっての2か月はとてつもなく長い。

 小学校~高校の授業再開時期の問題は盛んに論じられているが、幼児の問題はないがしろにされがちだ。でも、同じようにとても大切だということ、多くの人、特に自治体の長たる人たちは認識して早急に考え、対策を練って、よりよい方向に進めてほしい。

 そして社会は、小さな子どもたちを抱えて大変な親御さんたちに、温かい目で接してほしいと願う。都内で乳児を預かる保育園を運営している女性が言っていた。

「3度の食事にテレワーク、世のお母さんたちは今、本当に大変だと思います。小さいお子さんのいる方が、優先的に休める温かい社会であってほしいなと思ってます。まだまだ先が見えないですが、早く元の日常がもどるように、自分にいまできることを頑張りましょうー!」

〈取材・文/和田靜香〉