「やばっ あーゆーれりー?」

 しかし、今回の引退発表で思いを綴っているファンはツイッター、インスタグラム合わせても片手で数えられるほどしかなかった。ついに「引退」だというのにあまりにも彼女を惜しむ声が少なすぎて悲しくなる。もはや木下組の構成員を名乗ること自体が“分が悪い”ことなのかもしれない。現にファンの投稿に、アンチとおぼしき者からの「さびしいですね(笑顔の絵文字三連発) ホントに悲しい(クラッカーの絵文字3連発)」といった煽りコメントが届いていたのも確認できた。

 もはやSNSという公の場にはユッキーナのファンの居場所はないということか。タピオカ騒動以来、ずっとファンはこのような迫害を受け、徐々に彼女のことを支えきれなくなったのかもしれない。どおりで投稿が少なくなるわけだ。

 そこで、私はファン最後のサンクチュアリである公式ファンクラブ『MY HOMIE 木下組』に会員登録してみることにした。このコミュニティにならファンが集まっているかもしれない、と踏んだからだ。木下優樹菜最後の日にいったいどんな声をあげているのか。年会費5000円を払ってでも知りたい。

 会員登録をするためにまずメールアドレスと任意の仮パスワードを設定し、送信した。すると、《入会手続メールの送信が完了しました》の通知画面が開かれ、その下にユッキーナからのメッセージが表示される。

《おはよ〜〜!! おはこん(ハートマーク) from YUKINA こんばみー やぶんに(ハートマーク) やばっ あーゆーれりー? 題名なし おやすみ前のひとも。おやすみ中のひとも PoN!》

ファンクラブ会員の登録フォームにメールを送るとユッキーナからのメッセージが。スクリーンショットを撮った瞬間、すでに0時を回ってしまっていた
ファンクラブ会員の登録フォームにメールを送るとユッキーナからのメッセージが。スクリーンショットを撮った瞬間、すでに0時を回ってしまっていた
【写真】木下優樹菜ファンクラブに入会しようとすると現れる“怪文書”

──ほぼ解読不能なのは、私が本物のファンでないからか。それとも縦読みすべき文章なのか。「ガチ」と「もぐり」をあぶり出す踏み絵の存在に焦るが、'09年に開設されたファンクラブということもあってか、『クイズ! ヘキサゴンⅡ』の時代のキャラが文面いっぱいにあふれていてなんだか切ない。10年間の歴史とその悲哀を感じさせる名文である。

 そして私はメールアドレスに届いた入会手続きを完了させるページへと飛んだ。しかし、表示されたのはただただ無機質な知らせであった。

多くの皆様にご利用いただきましたが、2020年07月07日をもちまして閉鎖させていただきます。これまでの多くのお客様にご利用いただき心より御礼申しあげます》

 ページを何度もリロードするも、繰り返し表示されるのは同じ画面。ふと見上げると、時計の時刻は0時1分を指していた。

……そう、私はファンクラブ閉鎖の瞬間に立ち会ったのである。7月7日の0時をもって木下組という一大勢力は突如として解散の運びとなったわけだ。

「フォロワー500万人超えのインスタ」「ファンクラブ」今まで積み上げてきた全てのものが一夜にして消える。アンチと戦いながらユッキーナへの想いを綴る組員たちの居場所はいずこ。

〈皿乃まる美・コラムニスト〉