全く初めてのことを日々積み重ね、今度は屋内スポーツで観客を入れることをいち早くまた相撲協会が行う。感染者数が増えている中での決定だが、今後、感染者がいつになったら減るのか? 一向にPCR検査数も増えない中ではそんなものは見えない。ならば、出来る限りのことをして開催するという勝負に出た。

新しい大相撲がはじまった

 白星か黒星か? 結果はまだわからないが、白星にしようと「マス席では社会的距離を保つために中央にお座りください」、「大声の声援はおやめください 応援時にマスクを外すことは絶対におやめください」、「入場券の半券は14日間保管してください。感染者が出た場合にはお近くの席のお客さまには協会からご連絡します」と、細かく定めている。

令和2年大相撲7月場所。壁に貼られた観戦のルール事項(筆者撮影)
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 マス席に座っていた友人は「マスクをはずしている人を見つけると、立田川親方(元・豊真将)と稲川親方(元・普天王)がひとりひとりに声掛けしてたよ」と言っていた。とても丁寧な対応だ。

 やれる限りのことはやっている、と感じる。でも、だからこそ、今後さらに感染が拡がったりした場合には、再び無観客にするなど立ち止まることも躊躇なく行ってほしい。

 さて、肝心の取組では幕内に復帰した、照ノ富士の強さがまず光った。序二段まで落ちて戻って来た元大関という照ノ富士の存在こそ、新しい大相撲の象徴のよう。かつて、こんな人はいなかった。昔は番付がそこまで下がったら終わり、だったけど、彼は違う。ズドーンと下がってもまた頑張る。やり直す。日本社会がこれからの時代、こうあるべきというのを、相撲界で照ノ富士が真っ先に見せてくれている。不屈の人だ。

 新しいスターでは新大関、朝乃山の強さも光るが、新入幕・琴勝峰(ことしょうほう)の強さに注目したい。千葉県・柏市出身で、ご両親は柏駅前で『達磨』という居酒屋を営む。弟たちも相撲をやり、そのうち兄弟で相撲界を席巻しそうだ。学校の成績もよくて、中学時代はオール5だったというクールな知性派は、数年内に大関、いや、横綱になる人だと期待して応援している。

 そして、鶴竜の休場は残念で仕方ないが、そのぶん、白鵬がすごい。5月場所が中止になり、家から出られない、ぶつかり稽古もできない中で、どれだけトレーニングをひとり積んでいたんだろう? 首から肩、腕、胸回りがグンと盛り上がり、身体の張りがとてつもない。今場所中には「横綱として出場1000回」を達成しそうだ。

令和2年大相撲7月場所。イス席には使用禁止のシールが。隣の人と3席空けて座るため荷物置きに(筆者撮影)

 正直、私はコロナ禍で絶望してこの期間を過ごしてきた。白鵬に絶望はないのか? 前へ行く気持ちをどうやって保ち、実践していくのか? その勇気は、やる気はどこから湧いてくるのか? 今、ものすごく聞いてみたい。

 新しい大相撲が始まった。

 相撲ファンもそれに倣おうとしている。そこでお願いだ。これまで大相撲を伝える報道の中には、力士を罵り、ある一定の枠に押し込めてジャッジしたり、国籍差別するような言葉が多数あった。この相撲は汚いとか、土俵に命がけで上がってない人が決めつけて言う。いや、それは評論だから。そうかな? その域にも達してない、ただの悪口のようなものが多数散見された。もう、そういうのは止めてほしい。新しい時代だ。伝える側も変わってほしい。いちスー女からお願いしたい。


和田靜香(わだ・しずか)◎音楽/スー女コラムニスト。作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦やアルバイト迷走人生などに関するエッセイも多い。主な著書に『ワガママな病人vsつかえない医者』(文春文庫)、『おでんの汁にウツを沈めて〜44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー』(幻冬舎文庫)、『東京ロック・バー物語』『スー女のみかた』(シンコーミュージック・エンタテインメント)がある。ちなみに四股名は「和田翔龍(わだしょうりゅう)」。尊敬する“相撲の親方”である、元関脇・若翔洋さんから一文字もらった。