『逃げ恥』と『わたナギ』に通ずるもの

 『逃げ恥』がヒットしたのは楽しいラブコメだったからだが、結婚を会社に、夫婦を雇用主と従業員というビジネスパートナーに見立てて、恋人ではない男女が契約結婚をするという思考実験こそ、核にあるいちばんのおもしろさだった。

 しかし、2人が恋愛関係になってしまうと、思考実験の面白さが後退してしまう。それが歯がゆく、恋人にならずに2人が生きていく姿も見たかったなぁと思った。

 みくりと平匡が契約内容を何度も見直し、議論しながら、お互いにとっての理想の関係を積み上げていく。この結末も悪くはないのだが、「結局、ラブかよ」と思ってしまう。

 『逃げ恥』の影響が強い『わたナギ』も、(別の部署に移動するため)仕事を終了するナギサさんに対し、メイが勢いで「結婚しませんか」と言ってしまう。これは「好きの搾取」では? と思った『逃げ恥』視聴者は、多かったのではないかと思う。

 最終回。メイはナギサさんに、まずはトライアルで4日間の結婚生活を過ごそうと提案し同居をはじめる。しかし、3日でナギサさんはメイの前からいなくなってしまう。落ち込むメイだったが、実はナギサさんは年齢差を気にしており、先に死ぬ確率が高い自分と結婚したら、介護や世話でメイの未来を潰してしまうかもしれないと、恐ろしくなって逃げたのだ。

 そんなナギサさんにメイは「お互いに話し合ってその場その場で変化に対応していけばいいじゃないですか」と提案。最終的に2人は相思相愛となり結婚する。

 『わたナギ』も、『逃げ恥』のように“その都度、相談しながら理想の関係を2人で目指していこう”という結論になる。最適解だと思う一方で、結局、『わたナギ』も恋愛ドラマになっちゃったなぁ、という淋しさがあった。