「やはり『赤いスイートピー』でしょう。元祖ぶりっ子と言われ、女性の敵と言われた聖子が、この曲から同性の共感を得られるようになりました」

 さまざまなスキャンダルに見舞われても、ピンチをチャンスにかえてきた。そこには抜群のセルフプロデュース力が光っているという。

「'85年の郷ひろみとの破局会見では、生まれ変わったら一緒になろうねと話し合った”と涙ながらに訴えかけ、女性ファンの心をつかんでみせた聖子。でも、そんな話し合いの事実はありません(笑)。ただこの発言がなかったら、破局からわずか数か月後の神田正輝との婚約もファンから祝福されなかったでしょうね」

 さらにアイドルからアーティストに進化する過程で女性誌の表紙を飾るなど、今では当たり前になったアーティストのプロモーション活動でも新しい道を切り開いてきた。

「作詞・作曲、そしてプロデュースとすべてを手がけるアーティストとしての成長もさることながら、女性のあり方すら鮮やかに、軽やかに変えてみせたのが聖子の魅力ではないでしょうか」

 しかしプライベートでは激しいバッシングを受けたこともあった。

「アランやジェフなど過去に噂のあった男性が暴露本を出しても、たかの友梨のCMで彼らとの“行為”をイメージさせるようなシーンを再現。スキャンダルを逆手にとって自分のパワーにかえてしまう。これが聖子流。彼女の男性関係を俯瞰で見るとすべてが肥やし。ボイトレへの取り組みなど、歌に対するストイックな姿勢も郷ひろみから教わったことですから」

 数々のヒット曲とともに、芸能史にも燦然と輝く松田聖子。令和の今も、“聖子伝説”に終わりはない。

PROFILE●石田伸也(いしだ・しんや)●『アサヒ芸能』を中心に、主に芸能ノンフィクションを執筆。近著に松田聖子のデビューから40年を追った『1980年の松田聖子』(徳間書店)