空前のトットちゃんブーム

 時の人となったのが不動産を売却して納税額が爆上がりした俳優の三船敏郎さん(享年77)と演歌の大御所、三波春夫さん(享年77)だ。

 三波さんは'86年に敷地面積3300平方メートル、プール、ゴルフ練習場もある「三波御殿」と呼ばれた東京・中野区の自宅を売却したことが話題に。

「突然ランクに名前が挙がる俳優がいるんですが、これは本業以外にも不動産売却などで収入があったことが理由ですね」ちなみに同年、歌手・松田聖子と『2億円結婚式』が話題となった俳優の神田正輝も4位5995万円にランクインしていた。結婚を機にCM出演依頼が相次いだからだそう。

 '80年代、最注目は黒柳徹子だろう。'81年分から5年連続で首位を守った。理由は自伝窓際のトットちゃん』が当時500万部で戦後最大の大ベストセラーになったことから印税もガッポリ入った。

 俳優でタレントの山城新伍さん(享年70)も6回ランク入りしている。芸能レポーターの石川敏男さんによると、

「あのころ山城さんはいつもバラエティー番組に出ていたね」

 バブル崩壊が近づき、昭和が終わりを迎えようとしていた'80年代後半。ランキングに名前が挙がり始めたのが、「国民的女優」「お母さん女優」の代名詞をほしいままにしていた俳優・三田佳子だった。

【コラム1】そもそも『長者番付』って何?

 かつてはその年に数千万~億単位を納税した高額納税者を毎年公示していた。

 前出・田淵さんによると、

表向きは高額な納税で社会貢献している人を明らかにしようということですが、裏では“脱税を防ぐ狙い”ということでスタートしたと言われています

 “羽振りがいいのに公示されていない”そんな人を第三者から密告させる監視的な意味合いもあったようです」

 脱税を密告すると報酬がもらえるという制度があった時代もあるようだ。

【コラム2】なぜ『長者番付』は廃止されたの?

「廃止された明確な理由は明かされていません」

 そう説明するのは前出の田淵さん。

長者番付』は1947年納税分(公示は'48年)から始まり、2004年分(公示は'05年)に廃止された。

考えられる理由のひとつは個人情報保護の観点から

 というのも、1000万円以上の高額納税者は公示されると金額、名前だけでなく住所も明らかにされており、情報は誰でも簡単に手に入った。そのため犯罪防止の意味からも廃止を求める声が上がっていた。

個人情報がファンらにわかってしまうため、5ページで説明したように公示逃れをする芸能人は少なくなかったようです