市では条例の実効性を検証するものとして、希望する小学生を対象に、ニコチンが体内に吸収されたことがわかる「尿中コチニン値」の検査を行う予算案も可決された。この検査結果によって、条例の実効性を検証するという。

「検査で濃度が高ければ、なぜ子どもの濃度が高いのか根掘り葉掘り聞かれたり、家庭に喫煙者がいたら、呼んで指導するという可能性もある。条例の実効性が上がらないので罰則規定を設けましょうというのは、すぐに飛び越えられるハードルなんです。子どもの健康のためという入り口は誰も反対しないでしょう。しかしその実効性を上げようとすると結局、喫煙自体を違法にする出口しか見えなくなる可能性があります」(須田さん)

 大島弁護士によると、各自治体で同様の条例が増えてくると、最終的に法律化していく“条例先行型”パターンもあるという。もはや喫煙は私事(わたくしごと)ではなく、公的に議論する課題になりつつある。

生活保護受給者に対する密告制度のようなもの

 2013年4月に兵庫県小野市で施行された「福祉給付制度適正化条例」も問題視された条例だ。生活保護受給者に対して不正受給をしてはならないとともに、給付金をパチンコ、競輪、競馬などのギャンブルに使い果たして生活の維持ができなくなる事態を招いてはならないと規定。また、常習的にギャンブルに給付金を浪費する生活保護受給者を見つけた場合は市に情報提供することを市民の責務としている。

「不正受給はもちろんあってはならないことですが、情報提供を責務とするのは密告制度のようなもので、同調圧力に期待する条例と言えるでしょう」(大島弁護士)

密告社会を醸成する危険性もある(写真はイメージ)
【写真】行政法に詳しい大島義則弁護士

 私生活への過剰な干渉であり、憲法13条のプライバシーの侵害に違反するおそれがあるとして2013年4月26日に日本弁護士連合会が会長声明で反対意見を出したものの、条例は当初の形で現在も施行されている。

「生活保護受給者への差別意識を生む危険性もあります。本来ならば受給者に対する指導体制を強化するべきところを、密告社会で補おうとするのは不健全でしょう。この条例も道徳の押し付けを感じます」(大島弁護士)

 大島弁護士によれば、憲法や法律に抵触しやすい部分については、制裁のない「努力義務」や「責務」として条例化されることが多いという。確かな根拠なく市民の権利を制約するような条例については、市民が目を光らせて正していくべきだろう。

 2001年に施行された「DV防止法」を契機にして、「法は家庭に入らず」という限界を突破して家庭に対する法規制は活性化してきた。ただ、活性化すべき領域とすべきでない領域はあるだろう。ゲームの使用時間や喫煙に対して、法や条例が家庭に入っていくことを許すのか。どこまで家族で決めることとするのか考え、議論することが必要になってきている。