転がり落ちるように体調や気分が変化

 前述の衝撃エピソード、実はすべて対馬先生が実際に患者さんからうかがったことなのだそうです。

女性の身体は女性ホルモンによって守られ、コントロールされているんですね。閉経を迎えるということは、それまで自分の身体を守ってくれていた女性ホルモンがなくなってしまうということ。そのため、崖から崩れ落ちるような勢いで心身の調子が変化してしまうものなんです」(対馬先生)

 対馬先生いわく、自身の不調が閉経によるものだと自覚していない女性は少なくないとのこと。

「例えば、めまいや耳鳴りといった不調に悩み、何軒もの有名な病院で診てもらったものの症状がおさまらず『このまま死んでしまうのかもしれない……』と深刻な様子で来院された患者さんがいらっしゃいます。その方に女性ホルモンに関する軽い治療を行ったところ、1か月後には明るい笑顔で来院されたんです。つまり、その患者さんの不調はすべて閉経前後に訪れる更年期の症状だったんです

 更年期による不調は我慢をせず、早めに専門知識を持つ医師に相談するのが得策。

医師に話を聞いてもらい、検査して『不調の理由は更年期です』と原因を特定してもらうだけでも気持ちがらくになるものです。最近の産婦人科医の7割は女性医師ですから、女性医療の知識があるクリニックが格段に増えました。更年期の相談にものってもらえる医師を早めに見つけておくのが理想的ですね。特に、生理前になると心身の調子が悪くなるとか、産後に調子を崩した方というのは女性ホルモンの変化に弱く、更年期の症状も出やすい傾向があります。自分の気質や体質を知りつつ、医師に相談をしていきたいものですね」

 また、あるひとつのことを習慣化する“キーストーンハビット”に取り組むことも、更年期や閉経後の人生に大きく役立つといいます。

「習慣にすることは何でもよく、例えば“1年に1回、健診を受ける”でもいいんです。健診を受けて結果を目の当たりにすると健康への意識が高まりますから、毎年続けていくうちに自分の身体との付き合い方がわかるようになり、健康度が上がります」

 閉経前後の不調は通り過ぎて終わるものではないからこそ、自分自身のトリセツを少しずつ作っていくことが大切。

「閉経の平均年齢を50歳とすると、50歳から100歳は人生のふたつ目のステージ。残りの人生が50年もあるのですから、今から対策を始めても十分に間に合います。何らかの対応をすることは精神的にも自信につながり、健やかに第2の人生を歩んでいけることでしょう

【閉経前後に不調が起きる3つの要因】
閉経前後に訪れる更年期の症状は、個々によって変わってくる。それぞれの体質はもちろん環境要因なども関係する。
ホルモンの減少:卵巣が老化し、女性ホルモンの分泌量が急激に減ってしまう
気質・体質:生まれもった性格、ストレス耐性、ホルモンに対する感受性など
置かれた環境:親の介護、夫・子との関係、職場や近所での人間関係など

【閉経前後のトラブル】
体調や精神面、お肌や髪の状態など閉経前後に起きるトラブルは人によってさまざま。
心の不調:不安感、うつ気分、睡眠障害、集中力の低下、自己嫌悪感、イライラ、怒りっぽい、やる気のなさ、情緒不安定もの忘れなど
身体の不調:多汗、ほてり、冷え、疲れやすい、頭痛、頭重感、動悸、手の震え、めまい、耳鳴り、手指のこわばり、四十肩・五十肩、肩こり・首こり、むくみなど
美容トラブル:シワ、シミ、たるみ、体臭、肌の乾燥など