がまんは損!状況を確認し早めに対処を

女性の守り神”的な存在の女性ホルモンですが、具体的にはどのような働きを担っているのでしょうか。

女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」があります。このうち、女性ホルモンの主役ともいえるのが「エストロゲン」で、女性らしい身体を作り、妊娠・出産という機能に大きく関わっています。ほかにも、肌の潤いを保つ、骨や血管を健やかに保つ、脳の機能を維持する、自律神経を正常に保つ、代謝を促して肥満を予防するなど、健康面や美容面にも影響を及ぼしています」(対馬先生)

 女性ホルモンのゆらぎによる体調不良が疑われる場合、婦人科で受けられるのが採血による「女性ホルモン値」検査です。

「エストロゲンは3種類に分類され、このうち女性ホルモン値検査で見るのがエストラジオール(E2)の量です。もうひとつ、エストロゲンが足りないときに脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値も指標になります。これらふたつの数値を見ることで、自分の更年期のレベルがどのあたりなのかを知ることができます」

 エストロゲン(E2)の数値は年齢を重ねるごとに下がり、成熟期は10〜1000pg/mlほどである値が更年期には30pg/ml以下になる人も。この値を下回ると、女性ホルモンがあまり分泌されていない状態になる。卵胞刺激ホルモン(FSH)は逆に値が上がり、成熟期に3〜20mlU/mlでも、更年期に35mlU/ml以上に。ここまで上がっている人は、女性ホルモンを出せという司令が多くなっている。ただし、2つのホルモン値は常に変化しており採血の時期に左右されることもあるため「あくまで参考程度」と判断する医師も。

 実は、「女性ホルモンを出して!」と卵巣へサインを出して分泌を促し、全体的な女性ホルモン量を調整するのは、脳の役割。

「閉経前後にいろいろな症状が起きる原因は、脳が卵巣の老化に気づかずに『女性ホルモンを出して!』と命令を出し続けることにあります。いくら命令しても卵巣がこたえてくれないので脳はパニック状態に陥り全身の調整を行うという本来の機能が働かなくなっている可能性が。その結果、体内のさまざまな器官に支障が出てしまい、ほてりや多汗、めまいや頭痛といった更年期の不調となって現れるんです」

【気をつけて!閉経前後でかかりやすくなる病気】
 閉経前後から、女性の身体は女性ホルモンによる守護が徐々になくなっていきます。その結果、病気にかかりやすい状態に。

「50~60代に急増するのが子宮の内側にある子宮内膜にできる子宮体がんです。また、女性が患うがんの第1位でもある乳がんも、ホルモン量が下がり始める40歳を境に急増します。いずれのがんも定期的な検診を受けて早期発見することが大切です」

 また、リウマチや膠原病などの自己免疫疾患、脂質異常症などをはじめとする生活習慣病、変形性関節症など、体質や遺伝による疾患も現れやすくなる。

「例えば、患者さんの8割以上が女性といわれている膠原病は女性ホルモンの影響を受けやすい病気です。また、甲状腺疾患などをはじめ、更年期の不調と似た症状が現れるものもあります。更年期からは女性の身体を丁寧に診てくれるかかりつけ医を持ちたいものです」