女優・浜木綿子といえば、どんな役とシーンが思い浮かぶだろうか? 宝塚の可憐な娘役、背中で泣く夜の女役、夫に三くだり半を突きつける痛快な妻役、息子のために奮闘するおふくろ役、事件を解決に導くスゴ腕の監察医……。これまで、さまざまな役を演じてきた浜さんが“仕事”という舞台を降りてから、今は自分の人生というステージを謳歌している。そんな浜さんの暮らしぶりをご紹介する連載第3回です。
お元気ですか? 浜木綿子でございます。私は変わらずに……“老婆の休日”を楽しんでおります。
みなさん、声って気になりませんか? 私は、このごろ声がかれてきたので、なるべく声を出そうと心がけていますの。声帯は、すぐ硬くなるそうですからね。テレビを見ながら「あんぽんたん!」「それウソやろ!」「うるさい、アンタ!」とか、何でも言いたい放題。でも、自宅ですから誰にも迷惑をかけていませんよね。やってみると案外、気持ちよくってストレス解消になりますヨ!
宝塚の同期生や仲よしのお友達とはメールや電話でよく話します。同期生とは苦楽を共にしてきましたからツーカーの仲です。
友達と関西弁でベラベラと
「アッコ(編注:浜さんの本名の阿都子)元気かァ? 毎日、何してるの。ウチはなぁ、物忘れはするし、腰は痛いし、もうガタガタやわ」
「ウチもよ。歩くのもゆっくりゆっくりで、時々ひょろついて酔っ払いみたいや」
「それはアブナイなァ。ウチな、ラジオをよく聴くけど言葉が気になる人がいてはるなあ。“〇〇だからぁー”“〇〇でぇー”って語尾を強めて上げる人いてはるやろ。あれ、気になって話の内容が頭に入ってけぇへんな」
「そやな。ウチもそう思うわ。プロの人でも、いてはるやろ。かなわんなあ」
と、こんな会話を関西弁でベラベラと。私自身も気をつけなくてはいけませんが、きれいな日本語と正しい敬語は残しておきたいですね。
こんなことを言う私は古い人間だと自覚しています。でも、まさか90歳まで生かしていただけるとは思いませんでした、本当に。
最近お風呂につかっていると何だか苦しくなる日があるのですが、きっと水圧に耐えられなくなっているのでしょうね(笑)。つかったまま意識を失ったら一大事。やはり、身には服をまとっていたいですから、すぐにお風呂から出ます。朝、目が覚めたら「今日もお天道さまに会えた! ありがとう」って感謝して、毎日を丁寧に生きるようにしています。
私は家の中に、鏡を一部屋に一つは置いています(何で?と思われるでしょうが)。浴室や寝室には、みなさんも置かれていますよね。トイレにもかしら。私はリビングにも置いています。お食事のときに口のまわりに食べ物がついていないか、食べこぼしていないか確かめられるでしょ。鏡には、どんどん老いていく自分の姿が、そのまんま映し出されますから、それを受け止めないといけません。そのためにも鏡を置いています。
その姿を見て「もう、いいかぁ」なんて諦めてはダメですよ。これも忍耐かしら……。忍耐こそ人生の土台。忍耐力がないと前に進めませんよね。逃げ出さずに目標達成に向かって努力を続けるのが大事ではないかしら。
90歳だからって何かするのに遅いとは思いません。私はオシャレもお買い物も大好き。若いときは衝動買いをして「アッ、しまったあ! これ似合わない」ということが多々ありましたね。そのときはお友達で似合いそうな方に差し上げます。
それから……。いろいろなことを忘れちゃうのも悪いことではないんですって。私は以前から「忘却は幸せになる技術なり」という言葉が好きでした。記憶するよさもあれば忘れるよさもある。これも才能、神の恵み、と、おっしゃった方がいました。以前、セリフを忘れたときなどは、勝手に「これも才能、神の恵み」なんて思うようにして、この言葉にどれだけ救われましたか。たまに、うれしかったことまで忘れちゃうので困ったものです(笑)。
今もお友達と電話で話していると、アレ、いま何の話をしてたっけ?と話題を忘れちゃうことがあります。しっかりしなくては。「私もそうよ!」と思われた読者の方で80代より前だったら、それはちょっと早いですよ!「しっかり、しっかり!」ね。
では、また。
イラスト・デザイン/山口拓真






















