M-1グランプリ2020』で王者の座に輝いた、お笑いコンビのマヂカルラブリー。決勝と最終決戦で披露した、野田クリスタルがひたすら動き回り、それに村上がツッコミを入れるという「しゃべらない漫才」で優勝を飾ったことには、「漫才じゃない」という声もあがったが、お笑い界に吹く新たな風を感じる向きもあるよう。

 バラエティーなどを手掛けるある放送作家は、この優勝について、

「もともと実力のあるコンビでしたが、今のうっ憤がたまる世の中なだけに、正統派のしゃべくり漫才よりも、型破りな笑いがウケたのではないかという気がします。これが1年前だったらダメだったかもしれませんね。同じく最終決戦に残った、おいでやすこがの笑いも、似た部分はあります」

 と分析する。

「人を傷つけない笑い」は継承される?

 いっぽう、『女芸人No.1決定戦THE W 2020』では、ピン芸人の吉住が、銀行強盗に合うさなかに支店長に告白する女性銀行員という一人コントで4代目女王の座についた。

 この2組、昨年のM-1王者ミルクボーイや昨年のTHE W女王3時のヒロインのように、2021年のお茶の間の人気者として大活躍できるのだろうか。

「2組とも、陽の雰囲気ではないですよね。ひねくれている感が面白いところがありますが、それを活かして物怖じせずバンバンいけるようなことができれば、これからたくさん呼ばれるであろう番組で、結果を残していけるのではないでしょうか」(前出・放送作家)

 視聴者が“その人”に興味が持てるかどうかが大切。その人の人間性や家族や背景から、どんな人なのか? と想像するおもしろさは、視聴者をより刺激する。地上波でのバラエティーでの活躍見込みについては、

「住吉はマンションの管理人のバイトをしていたなど、意外な一面があります。そういうところを掘り下げることで、広く興味を持ってもらうようになると思います。もちろん、トーク力も重要なので、イジってくれる番組に出会えるかどうかもポイントですね」(同前)

 前回のM-1で優勝は逃したが、2020年に活躍をしたぺこぱのネタを筆頭に、「人を傷つけない笑い」が注目を集めたが、その流れはマヂラブや吉住の優勝で変わる可能性はあるだろうか。

「基本的には大きく変わることはないのではないでしょうか」

 と語るのはあるテレビ関係者。

「お笑い界、テレビ界全体が、人を傷つけないというか、見た目いじりなど悪口的なことを言ってはいけないという流れで浸透しています。たとえば有吉(弘行)さんも、毒舌ははくものの、人を傷つけるようなことは言いません。そういうモラルを破壊していくという面白さは、マヂカルラブリーや吉住に期待できるのではないでしょうか。ただ、モラルを逸脱してしまうと、今は叩かれたり炎上してしまう。守るべきモラルのギリギリのところを攻めるという面白さを出せていければいいのではないでしょうか」

 例年にならい、年末年始の出演ラッシュで、爪痕をどこまで残せるかを楽しみにしたい。

〈取材・文/渋谷恭太郎〉