ただ残念ながら、がん治療で保険が適用されるのは標準治療のみ。NKT細胞標的治療は、保険適用外なのだ。

 気になる費用は、各病院や患者の状態によっても異なるが、採血から4回の注射、血液の搬送や培養の費用などすべて含めて合計で平均325万円(+消費税)ほど。

 治療費が高額なこともあり、ほかの病院で標準治療を受けたけれども効果が得られなかったということもある。あるいは、抗がん剤の治療がつらくて、NKT細胞標的治療にたどり着くケースが多いという。

【保険が適用されるがんの治療法は3つ】
1.手術、2.放射線、3.抗がん剤。これらが、現在行われているがんの3大治療法だ。3つとも健康保険などが適用されるが、副作用や体力の問題でこれらの治療ができないケースもある。

余命2か月宣告がウソのように元気に!

 東京都に住む田尾昌子さん(仮名・72歳)の場合は、最初の病院で「有効な治療法がない」と余命宣告を受けた。

「最近、やけにお腹が出てきたなと思って病院に行って検査をしたら、卵巣に大きな腫瘍ができていたんです。しかも腹膜播種(はしゅ)といって、腹膜の中にまで、がんが散らばっている状態でした。余命2か月と言われ、ホスピスでの緩和ケアをすすめられました」(田尾さん、以下同)

 当時、自覚症状はなく「余命と言われてもピンとこなくて、なぜホスピス?」と反発を感じたという。

「医療技術は進歩しているはず、治療法がない、なんてことは絶対ない! そう思いましたね」

 田尾さんはそんな思いから情報を集め、友人の紹介で出あったのがNKT細胞標的治療だった。

「免疫療法や再生医療のことはニュースなどでよく耳にしていました。中川先生からもお話を聞いて、この治療に懸けてみようと思いました」

 一般の病院で抗がん剤治療を受けつつ、昨年の4月から東京シーサイドクリニックでNKT細胞標的治療に取り組むことに。

「抗がん剤治療のあとは、下痢、吐き気、皮膚の炎症……と身体がボロボロになる感じでした。NKT細胞標的治療の皮下注射を初めて打ったときは、瞬間痛かったんですけど、副作用はなく、むしろ気分がよくなりましたね。なんだか、がんが治る気がして。その夜は大好きな歌舞伎をテレビで見て安眠しました」

 4回の皮下注射を終え、4回目の抗がん剤治療のあと、腹膜のがんを摘出する手術をするはずだった。ところが──。

「昨年の10月に腹腔鏡手術で中を見たら腹膜播種が消えていて、抗がん剤で中を洗うだけですんだんです。こんなことはめったにないとお医者さんに言われて。NKT細胞標的治療を受けて本当によかったと思いました。今は食欲もあるし、体調がよく、家事も普通にやっています。これならまた働けそう」

 長年、教師として働き、自分用の貯金をしてきた田尾さん。“お金は残さなくていい、自分のために使えばいい”という夫の言葉も、治療を決めたひとつの理由だったという。余命2か月から約1年後には、こんなに元気になったのだから、まさに生き金になった。