まるで忍者のように

 わき容疑者は犯行現場から約2キロ離れた家賃月約5万円のワンルームマンションでひとり暮らし。周囲には「元畳職人」と名乗り、近所の住民らに気さくに話しかけるなど人当たりがよかった。

「6〜7年前に引っ越してきたときからひとりで、男性なのに毎日、布団を干し、こまめに洗濯や掃除をするきれい好き。“お金がかかるから外食はしない”と自炊して、おいしい炒めものやみそ汁を作る。ときどき、お裾(すそ)分けしてくれるんですよ。お年寄りが重そうな荷物を持っていると“オレが持っていってやるよ”と運んでくれるし、面倒見のいい性格なんですけれどもね」

 と同じマンションで暮らす女性。

 しかし、数年前に警察ざたになる事件を起こしたという。

「どこかで泥棒をしたみたいで、警察が自宅に来たとき無理やり玄関ドアを閉めて刑事さんが指を挟まれたり、逃げようとして3階ベランダから隣の建物の屋上に飛び移るなど大捕物を繰り広げたんですよ。あれには驚きましたね。忍者かって」(同女性)

 別の近所の女性はこのとき、「わき容疑者が隣宅との垣根をたやすく飛び越える姿を見た」と振り返る。あまりの身軽さに実年齢よりずっと若いと思い込んでいたそうだ。

 前出のマンションの女性住人は言う。

「大捕物から約1か月後には自宅に戻れて、“あー、のんびりしてきたよ”と、うそぶいていました。もともとホラ吹きというか、つじつまの合わない話が多く、“おふくろはオレがお腹の中にいるときに死んだんだよ”と言ったことがありました。じゃあ、あんたはどうやって生まれてきたんだと突っ込んだら黙っちゃって。都合が悪くなると無視したり、急に“うるせー”と怒ったりするんですよ」

 複数の近隣住民によると、わき容疑者は小柄で引き締まった体形。おでこの広くなった頭髪を黒く染めハンチング帽を好んでかぶった。

 日中は赤い自転車でどこかへ出かけ、遅くとも夕方には帰宅した。タバコもギャンブルも「お金がもったいないから」とやらず、晩酌に缶ビールを少々。「西日本の出身で娘がいる」と話したが、具体的な地名や娘の現況を話すことはなかった。

「腰痛で通院しており、生活保護を受けて慎ましく生活していた。金に困ることはなかったはず。ただ、読み書きが苦手で、役所からの通知などはひとに読んでもらったり、代書を頼んでいたようだ」(関係者)

 マイナンバーカードをつくるときは街角の証明写真ボックスの使い方がわからず、知人に付き添ってもらっている。ボタンを押す順番などをその場で教えてもらったにもかかわらず、誤操作してしまい、大きく引きのばした写真がプリントされ苦笑いした。エアコンの冷暖房を切り替えるリモコン操作も苦手だった。