よかれと思って損を招く、5大アクション

「相続税対策に」「家族を安心させたい」と、元気なうちにお金をあげたり、不動産の名義を変更したりする「生前贈与」。安易にやってしまいがちだけど、やり方を間違えるとかえってお金がかかってしまうことも。代表的な「5大アクション」をチェックしましょう!

【Q】持っている不動産を売って現金化すると損?

【A】お金より不動産で渡すほうが節税になる

「相続税や贈与税の計算をする際、賃貸不動産は、時価の3割ぐらいと低く評価されます」。つまり、3000万円分の預貯金や株よりも、3000万円分の賃貸不動産をもらったほうが税金が安くなるということ! 

「さらにその不動産が自宅で100坪までなら、相続の際に課税価額が最大80%安くなるという特例が使えます」

 ただし、注意点も。

「売ったり貸したりしづらく、自分が住まないような不動産は、むしろ相続人の負担に。生前に処分しておきましょう」

【Q】夫の銀行口座から一気に妻の口座へお金を移すと損?

【A】金額によって相続税より高い税率で贈与税が課税に

 たとえ夫婦であっても、金融資産や不動産を渡すと「贈与」とみなされ、その価額によっては贈与税を払うはめに。

年間110万円超の財産を渡すと、金額に応じて10~55%の贈与税がかかります。贈与税を払いたくないなら、少しずつ贈与してもらいましょう。“年間110万円以内じゃ間に合わない!”といった場合は、贈与税を払ってでも多めに受け取る、あるいは不動産にかえて受け取る手も」

 そのほか、非課税になる特例もいろいろあるので税理士などに相談を!

■相続税の税率
(法定相続分に応ずる取得金額/税率/控除額)
・1000万円以下/10%/控除なし
・3000万円以下/15%/50万円
・5000万円以下/20%/200万円

■贈与税の税率(一般税率)
(基礎控除後の課税価格/税率/控除額)
・600万超1000万円以下/40%/125万円
・1500万超3000万円以下/50%/250万円
・3000万円超/55%(※)/400万円
(※55%が最高)

【Q】「婚姻期間20年以上の特例」を使い、家の名義のうち2000万円分を贈与すると損?

【A】名義変更の手数料などで数十万円が必要!

「婚姻期間20年以上の夫婦なら、自宅用の不動産(またはそれを買うためのお金)を配偶者に贈与する際は、2000万円分までは贈与税がかからないという特例があります」

 ただし注意点が!

贈与税はかからなくても、不動産の名義変更の費用や、不動産取得税で合計何十万円もかかる可能性が。一方、相続であれば、取得税がかからないし、名義換えの費用は5分の1ですみます

 相続税がかからない範囲の財産であれば、「妻に渡す」という遺言書を書いてもらったうえで、相続時にもらうほうが得ということ!

【Q】生前贈与用に妻子の通帳を作って夫が管理しておくと損?

【A】生前贈与の成立要件を満たさず、相続税の対象に

「通帳の名義が誰であれ、夫がお金を出して管理していたなら、夫の財産とみなされます。夫の死後、そういう通帳が見つかったら、夫の財産として税務署に申告しなくてはなりません」

 それを避け、妻の財産として生前贈与したい場合は、贈る側ともらう側で贈与契約書を残して、通帳ももらっておくのがおすすめ。そして贈与額によっては夫は贈与税を納めておくこと!

【Q】車や高級時計をもらうと損?

【A】高額なら贈与税がかかる

 自動車、貴金属、高級時計、楽器、絵画骨董品、着物なども、相続税や贈与税の対象となる。よかれと思って高級時計や車をポンとプレゼントされた場合、その価額によっては税金がかかる。価値が110万円以下のものなら生前贈与してしまってもいいけれど、それ以上の価値があるものなら相続まで待ったほうが税金面で得になることも。

 相続させる場合は、財産目録に書き出しておき、どのくらいの価値のものなのかも伝えよう。