不安を感じる自分を責めないで

 福島県の太平洋沿い、相双地域で住民の精神的ケアを行う『相馬広域こころのケアセンターなごみ』の米倉一磨センター長(精神科認定看護師)は「13日の地震後に、新地町や相馬市など相双地域で支援を必要とする人が急増したという状況はありません」としながらも、「瓦(かわら)が落ちたり、家の一部が壊れたりした場合、経済的にも体力的にも復旧に取り組めない人が多いはずです。一定の時間が経過した後に、今回の地震の影響が出てくる人もいるのではないでしょうか」と話す。

取材に応じてくれた『相馬広域こころのケアセンターなごみ』の米倉一磨センター長(精神科認定看護師) 撮影/ウネリウネラ
取材に応じてくれた『相馬広域こころのケアセンターなごみ』の米倉一磨センター長(精神科認定看護師) 撮影/ウネリウネラ
【写真】2・13地震の揺れを受け、筆者宅の台所や本棚はひどく散乱。荒れた様子をカメラに収めた

 Aさんたちのように、3・11の記憶がよみがえり、不安が高まっている人はどう対処すればいいのか。米倉さんはこう話す。

「不安はあって当然。“不安を感じている自分を責める必要はない”と理解することが大前提です。そのうえで、不安を表現できるかがカギになります。不安を自分の中にため込まず、“怖くてしょうがなかった”と誰かに話せるといいですね。それでも解消されなければ、専門機関に相談するのも選択肢になります」

「さらなる地震が発生する可能性が高い」とされた一週間は経過したが、「少なくとも、今後10年間は大規模な余震への警戒が必要」との指摘もある。13日の地震の影響で、福島第一原発1・3号機の格納容器内の水位が低下している、という報道もあった。Aさんらの不安が解消される日は、残念ながら遠そうだ。せめて、その不安感を身の回りの人と共有し、不安を感じる自分の心を受け止めるようにしたいところである。

(取材・文/ウネリウネラ)


【PROFILE】
ウネリウネラ ◎ともに元朝日新聞記者の牧内昇平(=ウネリ)、牧内麻衣(=ウネラ)による物書きユニット(公式サイト→https://uneriunera.com)。昇平は2006年、朝日新聞社に入社。経済部、特別報道部を経て'20年に退社。現在は福島に拠点を置き取材活動を行う。主な取材分野は過労・パワハラ・貧困問題と、東日本大震災と福島原発事故。著書に『過労死 その仕事、命より大切ですか』『「れいわ現象」の正体』(いずれもポプラ社)。麻衣を中心に出版業(ウネリウネラBOOKS)も始め、今月、第1冊目のエッセイ集『らくがき』を刊行。