注目はリポーターの人気とやる気

 ロケ番組の命運を分ける最大のポイントは、「誰がどういうロケをする番組なのか」。

 タレントではなく主にスタッフがリポーターとなるロケ番組なら、「現場の人数を最小限にできる」「タレントにリスクを背負わせなくて済む」などの理由から放送のハードルが低くなる。つまり、コロナ禍でもレギュラー放送していく上での支障は少ない。

 また、タレントがリポーターとなるロケでも、「売れっ子なのか、若手なのか」の違いで放送のハードルは大きく変わる。

 「若手に外のロケを担当させて、売れっ子はスタジオで見守る」というタイプの番組ならまだいいが、『ダウンタウンなう』のような大物芸能人がロケに出る番組はもともとハードルが高い企画のため、コロナ禍などのきっかけで「終了しよう」という話になりやすい。

 そもそもロケをするタレント本人が前向きでなければ、コロナ禍でのロケ番組は成立しないし、売れっ子や大物に無理してロケをさせることは各局にとって得策とは言えない。その意味で、売れっ子芸能人たちがリポーターを務める上に、アポなしロケが売りだった『火曜サプライズ』の放送続行が難しいのは当然だろう。コロナ禍の今、「アポなしロケをやりたい」という人気芸能人はほとんどいないからだ。

 さらに、ロケ番組が「ファミリー向けか、中高年層向けか」の違いも、終了・移動と続行・新番組の差を分けている。昨春の視聴率調査リニューアルによって民放各局がスポンサー受けのいい10~40代に向けた番組制作を進めはじめた。その点、視聴年齢層が高いと言われる『ダウンタウンなう』『アナザースカイ』『噂の!東京マガジン』は、無理して放送を続ける必然性はない。

 新たなロケ番組をスタートさせるケースでは、ファミリー向けの内容であることが前提条件となる。コロナ禍で広告収入減に悩まされる中、スポンサー受けのいいファミリー向けの番組なら、多少のリスクを承知で挑戦する価値があるからだ。

「コロナ禍のロケ番組というリスクがあっても、ファミリー層の個人視聴率が獲れるのならやろう」が本音ではないか。

店員と客のリスクがあるロケはNG

 ファミリー向けの番組制作を進める上で欠かせないのが、グルメ系の企画。グルメはファミリー最大の共通語として親子視聴をうながすジャンルであり、コロナ禍の真っ最中であるにもかかわらず、『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』がスタートすることからも、それがわかるだろう。

 また、このところ『ジョブチューン』(TBS系)や『ウワサのお客さま』(フジテレビ系)のようなグルメチェーン店の企画を目玉にした番組が多いことも、グルメ=ファミリー向けの図式を裏づけている。

 そのほかのポイントとしては、「店員や一般客のリスクが高いロケになっていないか」。『火曜サプライズ』『夜の巷を徘徊しない』のようなタレントと店員や一般客の接触シーンがあるロケ番組は、何かと批判を受けやすい。それを避けるために、お取り寄せ企画やクッキング企画で場をつなぐにしても限界があるだけに、「改編のタイミングで終了させられやすい番組だった」と言えるのではないか。

木村隆志(コラムニスト、テレビ解説)
ウェブを中心に月30本前後のコラムを提供し、年間約1億PVを記録するほか、『週刊フジテレビ批評』などの番組にも出演。各番組に情報提供を行うほか、取材歴2000人超の著名人専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。