そして2018年1月、ジャニーズカウントダウンライブの場で、KAT-TUNは活動を再開した。その第1弾シングルは「Ask Yourself」(2018年4月発売)。自分自身に問いかけながら、悲しみや痛みのなかに希望の光を見出そうとする内容は、まさに充電期間中の彼らのことを指しているようでもある。活動再開直後には東京ドーム公演、さらに全国ツアーも開催された。

 再出発した3人からは、改めてグループとしての結束を強めた様子がうかがえる。そしてそうしたなかに、以前にも増して自然体の感じがある。充電期間中にそれぞれがタレントとして成長することで、いい意味での余裕が生まれた印象だ。

タモリさんに語った「15周年」

 最新シングル「Roar」のテレビ初披露となった3月5日放送の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で、司会のタモリからデビュー15周年について聞かれた上田竜也は、「15年間支えてくれたファンのかたに恩返しできるような1年になればいいなと思っています」と答えていた。

 シンプルな言葉だが、KAT-TUNのこれまでの道のりを思えば、とても重みのある言葉だ。とりわけ彼らにとって、ファンの存在は大きい。思い出すのは、『KAT-TUNの世界一タメになる旅!』(TBSテレビ系、2014年放送開始)の、彼らが充電期間に入る直前に放送された回だ。ヘリコプターに乗ったメンバーに向けて、400人のファンが地上からサプライズでボードメッセージを送った。そこには「KAT-TUN充電だよね?」、そして「放電するなよ!!」と書かれていた。

 粋な、そして愛情のこもったメッセージである。アイドルグループのファンにはそれぞれ独自の呼び名があることが多いが、KAT-TUNの場合は「ハイフン」、つまりグループ名の中心にある「-」から付いた。「メンバーとともにいつもそこにいる」ファンという大切な存在の意味を、これほど見事に表した呼び名もあまりないだろう。上田竜也の言葉には、そんな「ハイフン」と彼らが紡いできた歴史を感じさせるものがあった。

 “不良系”アイドルは、ジャニーズ、ひいては男性アイドルの世界にいなくては困るもの。王子様のようなタイプだけでは成り立たない。ファンのためにも、そのトップランナーとしての役割を果たす責任が、KAT-TUNにはあるはずだ。


太田 省一(おおた しょういち)Shoichi Ota 社会学者、文筆家
東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。それを踏まえ、現在はテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、歌番組、ドラマなどについて執筆活動を続けている。著書として『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『平成テレビジョン・スタディーズ』(青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新書)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社新書)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)などがある。