とくに、ネットが騒然としたのは、第9話。レスラーとしての引退を決意した寿一の試合前に、長州力さんが「レスラーなんて、何回引退しても、何回もカムバックすりゃいい」と言うセリフが、「クドカンから長瀬さんへのメッセージに聞こえた」と、話題に。

 さらに最終回では、「俺がいない俺の家の話」という言葉や「俺は俺の家が大丈夫なら、大丈夫なんで」といったセリフが長瀬さん自身の口から語られ、いやが応でも長瀬さん不在のTOKIOに想いを馳せることとなりました。

 折しも、この最終回の直後、TOKIOの看板番組である「ザ!鉄腕!DASH!!」にもシンクロするようなシーンがありました。

 桜吹雪のプロジェクターにうつる5人の影絵を見て、「え、どうして4人じゃなくて5人?」と驚くメンバーに「いいじゃん、(TOKIOは)どうせ(もともと)5人なんだから」と長瀬さんが屈託なく語る場面が放送されたのです。

 この放送を見て、再び、「俺の家の話」の最終回が思い出されました。

50歳、60歳になった時の最高傑作も見てみたい

「俺の家の話」の最終回では、能楽の「隅田川」に重ね合わせ、息子の死を受け入れられない父・寿三郎と、自分の死を受け入れられない息子・寿一が、舞台の上で再会する場面が描かれています。

「隅田川」において、子どもの亡霊を実際に舞台に出すか出さないかという議論があったとき、世阿弥は「子どもの亡霊は出さない。出さずして、その存在を観客に感じさせたほうがよい」と語ったと、寿三郎は寿一に伝えました。

 しかし寿一はその時、自分が息子だったら亡霊になってでも姿をあらわしたい。「だって、会いてーもん」と、答えています。

 その言葉のとおり、一度はこの世界から姿を消したはずなのに、舞台そでに姿をあらわした寿一。その寿一の姿と、俳優・長瀬智也の姿を重ね合わせ、今後に期待をした視聴者も多かったのではないでしょうか。

 多くの視聴者を、笑いと涙に誘った長瀬さんの(暫定)最高傑作。これがラスト(かもしれない)と言われると、なおさら、これからも、長瀬さんの出演作が見られますようにと願ってしまうのです。

 先に書いたように、ドラマが始まる前には「長瀬さんの最高傑作にしたい」と意気込みを語っていたプロデューサーの磯山晶さんも、ドラマの最終回直前のインタビューでは、

「この作品を最高傑作にはしたくない。これが最後の作品ではなく、50歳、60歳になった長瀬さんの作品も見たい」

 と、話していらしたとか。

 心の底から、同感です。私も、見たい。

 現場からは以上です。


佐藤 友美(さとう ゆみ)Yumi Sato ライター・コラムニスト
1976年北海道知床半島生まれ。テレビ制作会社のADを経て文筆業に転向。元東京富士大学客員准教授。書籍ライターとして、ビジネス書、実用書、教育書等のライティングを担当する一方、独自の切り口で、様々な媒体にエッセイやコラムを執筆している。
著書に8万部を突破した『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)、『道を継ぐ』(アタシ社)など。理想の男性は冴羽獠。理想の母親はムーミンのママ。