減収などの影響を受けるシングルマザー達

 長引くコロナ禍で、女性の貧困問題があらためて浮き彫りになっている。厚生労働省によると、母子家庭の平均年間収入は243万円と、父子家庭の420万円をはるかに下回る。この数字だけでも、母子家庭が貧困状態に陥りやすいのは火を見るよりも明らかだが、コロナ禍がさらに追い打ちをかけ、なかには死を意識する女性もいた。

『子育てパレット』が実施するフードバンクの参加には、24時間対応している子育て相談用のLINEアカウントへの登録が必要だ。登録者は当初、10人ほどしかいなかったが、新型コロナの感染拡大に伴って急増し、3月26日時点で346人と30倍以上に膨れ上がった。

 代表の三浦りささん(56)が、コロナ禍の参加状況を説明する。

フードバンクの参加者枠は40人ですが、告知をしたら申し込みが殺到し、5分以内に埋まってしまいます

『子育てパレット』が行ったフードバンクの模様。困窮するママたちにとっては命綱だ
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 多いときは40人の枠に倍以上の問い合わせが入ったため、1か月に1回開催のところを2回に分けて対応した月もあった。申し込みは他の支援団体にも広がり、足立区でフードバンクを実施する団体や施設がコロナ前は3か所しかなかったのに、今では12か所へ拡大した。

 参加するママたちの多くは、パートをはじめとする非正規雇用で働いていたため、コロナ禍で切られては職探しという綱渡りのような日々を送っていた。三浦さんが続ける。

シングルの母親たちは子育てがあるために残業ができず、どうしても限られた時間でしか仕事ができません。そうした制約に加えて、責任の重い正社員の仕事に就くのは負担が大きい。この結果、飲食やサービス業での非正規に落ち着くのが実情です

 24時間対応のLINE相談も、コロナ前は1か月に数件程度だったのが、1回目の緊急事態宣言が出された昨年4月は67件に急増し、その後も増え続けて6月には74件に上った。失職や時短営業による減収に加え、こんな相談も舞い込んだ。

子どもが就職して家計が楽になると思ったが、コロナで採用が取り消された

大学生の息子がオンライン授業ばかりで大学生活に意義を見いだせなくなり、授業料を支払うのも嫌になって、大学をやめた

裁判期日が延期になり離婚調停が進まなかった。離婚が成立しないので児童手当がもらえず、貯金を取り崩した

『子育てパレット』では、地域の拠り所となり、子連れで立ち寄れる“ママの居場所”づくりにも力を注ぐ

 NPO法人『しんぐるまざあず・ふぉーらむ』などが昨年7月、約1800人を対象に行った調査では、コロナ禍で減収などの影響を受けたシングルマザーが7割超を占めた。自身の感染によって家族をケアできなくなる懸念から自発的に休職・退職したケースは3割にも上った。

 こうした経済的な問題に加え、メディアで流される“よき母親像”やSNS上の投稿が「母親たちのメンタルを刺激している」と、前出の三浦さんは指摘する。

子どもにプールを用意したり、インスタ映えするごはんの写真がアップされたりすると、自分の子育てと比較してダメだと思い込み、きちんと育てなきゃ、部屋を掃除しなきゃと頑張ってしまう。本当は苦しいのに世間体を気にして声を上げられず、我慢を重ねれば、本人がつぶれてしまいます

 ネット上で形成された「子育ての明るいイメージ」は、シングルマザーを苦しめ、劣等感から声を上げづらくなったり、必要以上に頑張ったりする。そうした現状を踏まえ、三浦さんが「大変だよね。何かあったら遠慮なく言ってください」とLINEでやさしく伝えると、堰を切ったように気持ちを吐き出すママたちもいるという。

そんなに頑張らなくていい、ぐうたらな日々を送るママでいいんだよって。子どもにいちばん必要なのは、ママが笑顔でいることなんです