もっとも、彼女の息子については元夫が面倒を見ることに。辻は離婚直後、隠れて泣いていた息子の姿に「自分が母親の役目もしなきゃ(略)美味しいごはんを作らなきゃ、と思った」という。その後、スポーツの大会で取ったメダルを見せられたときには《唐揚げ弁当の成果かな(笑)。やったね》とつぶやいたり。もうすっかり「母親」の発言だ。「中性化」が騒がれただけあって、男性のレベルを超えた「女子力」の持ち主なのだろう。

 逆にこの状況は、美穂にとってかなりつらいはずだ。前出の本でも、自分が寂しい幼少期を送った分、家族の絆が保たれ、息子が親の仲のよさに憧れていることがうれしいようで、

「彼にとっていつまでも理想の夫婦でありたいと思っています」

 と、綴っていた。その理想が破れたばかりか、自分が務めるはずの母親役も元夫に代わられてしまったのだから。

 ところで、彼女はデビュー当時、非常に無口でインタビューでは筆者も苦労させられた。妹もそうだったが「お姉ちゃんはもっとしゃべらなかったよね」と、仕事仲間同士で語り合ったものだ。にもかかわらず、歌や芝居になると生き生きとした輝きを見せるので、天性の芸能人だと感心させられたりもした。

 そんな輝きがここ数年、薄れているように思われる。かつて『ママはアイドル』(TBS系)でアイドル「ミポリン」を演じたころには、その女子力が同性をも夢中にさせたのに。元夫に女子力で負けてしまうというのは、どんな気分だろうか。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。