五輪会場は東京から約100キロ、房総半島の太平洋側に位置する千葉県一宮町の釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ。会場に向かう沿道には「TOKYO 2020」などと記したカラフルな幟(のぼり)がはためき、通りがかりの女性はその様子をスマホで撮影していた。

「雰囲気だけでも、と思って」

 と笑った。

沿道から見たサーフィン会場。右側奥に白を基調とした施設がいくつも並ぶ

 新型コロナウイルス感染者増による東京都の緊急事態宣言を受け、1都3県(千葉、神奈川、埼玉)は無観客開催を決定。2016年の開催地決定から準備してきた同町の住民であっても、生観戦できなくなった。浜から離れた会場出入り口に警備員が立ち、それ以上は近づけない。

 規制外の隣の海岸から会場をながめても、会場内の施設にさえぎられて様子はうかがえない。そもそも遠すぎて人の姿が確認できても米粒以下の小ささだから“観戦の抜け穴”は皆無といっていい。

 それでも諦めきれず、

「どこかのスポットから少しでも競技を見られないものか」

 と町役場に尋ねた住民もいる。

 気持ちはわかるがそんな場所は見当たらず、無観客の意図も踏まえるとテレビ中継を観戦するしかないだろう。

隣の海岸からみたサーフィン会場。四角い建造物が邪魔をして中の様子はわからない

 コロナさえなければにぎやかな競技になるはずだった。

 会場の収容人数は1日6000人。サーフィンは自然の海を相手とするため、いい波が立たないと競技が成立しない。そのため予備日が設けられており、競技ができなくても来場者が楽しめるように「サーフィンフェスティバル」を連日実施予定だった。飲食スペースを設け、音楽ライブを満喫してもらったり、サーフィン体験などで競技の魅力を伝えるはずが、無観客で中止になった。

 同町の女性美容師は言う。

「地元の同業女性で、海外の選手や世界中から集まる観戦客を浴衣姿で出迎えるはずでした。フェスのために音楽の練習をしてきた人たちもいます。でも命は大事ですし、無観客でやるとなった以上は、安全に気をつけて無事競技を終えてもらいたいです」

 東京駅から「特急わかしお」に乗って約1時間、会場にアクセスしやすいJR上総一ノ宮駅には改札口がひとつしかなかったが、海側に改札口が新設されて2つになった。増設前、下車した人が海に向かうには歩きでも車でも幅の狭い踏切を渡らなければならず、危険や混乱が目にみえていた。

 結果的に大勢の五輪観戦客らで駅がごった返すことはなくなった。