地方出身者が都会で子育てするのは損?

「私がMさんに対して劣等感を抱かなければよいのですが……。子どもから突然『この花、なんていうの? 』と聞かれたときにもさらりと答えてしまうくらいMさんは博識なので、思わず『どこの大学を出ているのですか?』と聞いたら、誰でも知っているような名門校でした」

 地方と都心部では、大学進学率自体に数十パーセント差があることも。Mさんとは都会と地方という差だけではなく、学歴などの面でも優劣を感じてしまうそう。

「大学の話をしたときも、Mさんは『別にたいしたことじゃないよ』って。自分から知識をひけらかさないので、余計こちらがみじめに感じてしまうんですよね……。Mさんの周りでは大学に行くのも普通のことで、Mさんは子どもが高学年になったら当然のように中学受験を考えていると話していました。聞いてみると、Mさんの学区では3分の1が中学受験をするため、珍しいことではないそうなのです」

 奈緒美さんは、自分たち夫婦の収入では私立中学に通わせるのは難しいため中学受験を考えてはいませんが、子どもにも学力差が出てしまうのではないかと不安になったと語ります。

「自分は短大卒で、夫は専門卒。娘が大学に行きたいと思ったら行かせたいと考えていますが、有名大学に行かせるにはこんなに早い時期から準備しなきゃならないのか、と壁を感じました。勉強以外でも、東京が地元のママさんの中には、二世帯住宅で家賃がかからなかったり、実家から手伝ってもらう話も聞きます。そういう家庭と比べたら、地方出身者が都会で子育てするのは損ですよね……」

 利便性の高さなど、東京で子育てするメリットはたくさんあるはずですが、寛子さんや奈緒美さんのように悩みのタネになってしまう例も見受けられます。

 一説には、子どもと一緒にいられる時間は、睡眠時間や労働時間などを除くと、生涯を通して約9年という試算もあります。子育て中は正解がわからず、周りがよく見えたりもしますが、置かれた環境の中で、子どもと一緒に過ごせる時間を最大限に楽しむ余裕も必要なのかもしれません。


池守りぜね◎東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。Twitter:@rizeneration