感謝しながら舞台へ

「巧妙に張り巡らされた伏線があって、証言も食い違っていく。誰が本当のことを言っているんだろうと疑いながら物語の結末を迎えるところが今回の舞台の魅力のひとつだと思います。前回の『エレファント・マン』で演出の森さんから“ほかの登場人物とぜんぜん交流してない”と言われ、ちゃんと相手の芝居を受けて返していなかったことに気づいたんです。

 今回の小川さんは“自分と相手のあいだに線ができる”というふうに表現されるんですが、しっかり心と心が通っている芝居をしたいと思っています。そうすることで見てくださる方々の心も動いていく。それが、演劇なのかなと思うので」

 前作と同じように原作の小説を読み、映画化された作品を見たりしながら役作りをしていった。コロナ禍でマスクをつけたままの稽古が多く、相手の表情が読み取りにくいという苦労がありながらも「この状況下で舞台をやらせてもらえることに感謝している」と語る。

 今回の舞台の稽古に入ってから何か始めたことがあるか聞くと、

「始めたことではないのですが、“嘘”というものをすごく意識するようになりました。嘘をついてみたいなとか、誰かに嘘をつかれてみたいとか(笑)。

 それと、演じるレナードが貧しい地方の出身なので、少し身体を絞ろうと思って出前をやめました。なるべく自炊をするようにしています。今晩は豚しゃぶサラダにしようかな。とはいえ、コンビニで買ってしまうこともあるんですけど(笑)」

出会ったときと今で印象が変わった人は?

 (ジャニーズWESTの)メンバーで言ったら、シゲ(重岡大毅)じゃないですかね。10年以上前、関西ジャニーズJr.のころに僕と(藤井)流星と神ちゃん(神山智洋)と、シゲでグループを組んだときがありました。シゲは神ちゃんと“アイドルっぽい曲が歌いたい!!”って言っていたんです。それが、いまはめちゃくちゃロック調の曲が好きで、歌っていますから。

 それと、以前は少し長めの前髪にこだわっていたのに、いまは隙があればマネージャーさんに「髪切りたいねんけど」「切りたいねんけど」って訴えています(笑)。

自分自身の印象も変わったと思う?

 僕も変わったと思います。事務所に入所したばかりのころは、めちゃくちゃ猫かぶっていましたから(笑)。入ったばかりで訳がわからなかったので、じっとしていたんです。そうしたら「のんちゃんは、おとなしくて、癒し系やな」って言われるようになってしまいました(笑)。その殻を破ってくれたのは(ジャニーズWESTの)メンバーです。おかげで、ありのままでいれている感じです。

次に挑戦したい作品は?

 この先も演劇というか、お芝居を続けていきたいとは思っています。『エレファント・マン』は、その前の作品から5年あいているんです。賞までいただけて、次は2〜3年のあいだに舞台に立てたらいいなと思っていたら、1年もたたずに『検察側の証人』のお話をいただけました。今は目の前のことに精いっぱいというのが本音で、次はこんな作品に出たいというところまで、いけていないです。

舞台『検察側の証人』

東京:8月28日〜9月12日 世田谷パブリックシアター
兵庫:9月16日〜20日 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
大阪:9月23日〜28日 枚方市総合文化芸術センター 関西医大 大ホール
公式サイト https://www.kensatsugawa.com/