もし、たばこ税がなくなってしまったら、国民の税負担は増えるのだろうか。経済評論家の森永卓郎さんに聞いた。

「約2兆円の税収がなくなってしまうのは国としても痛手です。昨年の税収がおよそ60兆円ですから、たばこ税はそのうちの3%ほどを担っていることになります。簡単に穴埋めするのなら、消費税でしょう。昨年の消費税収は20兆円ほどですから、1%増税すれば2兆円の穴埋めはできるということになります。ほかにも所得税だったり、酒税やガソリン税値上げで不足分をまかなう、ということになるかもしれませんね」(以下カギカッコ内は森永さん)

 さらに、たばこ特別税の負担も、たばこが無くなると国民全員に負担がいく可能性もある。

「たばこ特別税は、利子も含めた旧国鉄の債務約28兆1千億円と、国有林野事業特別会計の負債3兆8千億などの債務処理のために課税されているものです。国の事業の負債を、喫煙者に払わせているんですよ

 いまだに旧国鉄の債務は16兆2,628億円(令和元年時点)、国有林野事業特別時会計の負債は1兆 1,866 億円(令和2年時点)が残っていると財務省が発表している。

経営破たんした国鉄の長期債務の一部をたばこ特別税として負担している ※画像はイメージです

この負債もたばこ税がなくなったら、他の税金の値上げなどで国民全員が負担することになる可能性が高いと思います

 たばこ税と同じく個別に税金がかかる商品と比べても、アルコールにかかる酒税は最高でもビールが50%弱、ウィスキーは約30%、日本酒などの清酒は10%ほど。ガソリン税も1リットルあたり60円弱。時期や地域によって価格変動があるものの、ガソリン価格はここ数年1リットルあたり120円を下回ることはほぼないため、負担割合として50%を超えることはまれだ。

 たばこ税は間接税の中でもダントツの税率であり、喫煙者はそれだけ納税をしているということになる。

コロナ禍+五輪で喫煙者はますますのけ者に

 ところが、喫煙者は一層肩身の狭い思いを余儀なくされている。

「オリンピック招致決定に伴い、国は健康増進法を改正し、メーン会場となる東京都では『東京都受動喫煙防止条例』を制定しました。これによって、公共性の高い施設は敷地内禁煙、喫茶店やレストランなどの飲食店も原則禁煙となり、たばこを吸うことのできる場所、空間は東京を中心に急速に減っていきました

 ただでさえ少なくなっていた喫煙空間に追い討ちをかけたのがコロナウイルスの流行だ。密な空間は避けるべきとされ、駅前やビル内などに設けられていた喫煙所が次々と封鎖されていった。緊急事態宣言を機に再開の時期を決めずに閉鎖され、宣言解除後もそのまま利用が再開されない喫煙所も多い。

コロナ禍で密を避けるため閉鎖される喫煙所 ※画像はイメージです

 喫煙所が減ったこと、またコロナ禍でテレワークが推奨されたこともあり、在宅率が上がったことから、外では吸わず、家で吸う喫煙者も増えたが、集合住宅ではたばこのにおいや煙が隣人トラブルの原因になることが以前から多く、また家族が非喫煙者だったり、小さい子どもがいたりする環境では家で吸うことも決して好ましいとは言えないだろう。