「南米・コロンビアで発見された新型コロナウイルス感染症の変異株『ミュー株』はワクチンなどでできた抗体が効きにくいようです」

 そう話すのは、医療ジャーナリストの村上和巳さん。厚生労働省は今月1日、6月から7月にかけて成田と羽田の空港検疫で陽性となった2人からミュー株が検出されたと発表。国内で確認されたのは初めてだった。ある医療関係者によると、

「先日、東京大学医科学研究所などの研究チームが変異株の分析結果を発表しました。ミュー株はワクチン接種などで作られる“中和抗体”の効果が従来株と比べて約7分の1になるという衝撃のデータでした」

 中和抗体とは、体内で感染や重症化を防ぐ作用のこと。

「研究チームは“ワクチン接種は免疫の記憶が活性化されるなどの効果があるので、ワクチンがまったく効かないというわけではない”と言っていますが……。ミュー株が脅威であることは確かです」(同・医療関係者)

 前出の村上さんも、付け加える。

「しかも、アストラゼネカのワクチンは、ミュー株と共通する変異を持っているベータ株にはほとんど効かないということがわかっています。今後、前回と違うワクチンとの交差接種するアストラゼネカのワクチン接種者が多くなるともいわれています。」(村上さん、以下同)

やはりワクチン接種が最善の防御策

 今後、日本でミュー株の感染が広がっていくことはあるのだろうか──。

「実験室レベルの話ですが、今のところ猛威を振るっているデルタ株のような増え方はしないと考えられています。ただし、実際はどうなるかはわかりません」

 重症化リスクについては、

「新種の変異株については、まったくわからないというのが現状です」

 ファイザーのワクチンは接種を完了した半年後に抗体が84%も減少しているという研究結果も発表された。いつまでたっても不安が拭えないように思えるが、

「抗体量がどのくらいまで減少したら、感染のリスクが増えるのか、その相関関係が現状のところ誰もわかっていないんです。だから、早計に危ないとは言い切れない。

 今のところワクチン接種が最善の防御策であることは間違いないです」

 ワクチンに加えて、抗体カクテル療法などの治療薬の開発も進んでいる。一方で、“イータ株”“カッパ株”など変異株が国内で続々と発見されている……。

 コロナと人類のいたちごっこはいったいいつ終わるのだろうか──。

※記事の内容を一部修正して更新しました(2021年9月16日17時35分)