“困っている誰か”を助けたい気持ち

 七尾さんをきっかけに広がった、他人同士が寄り添い支え合う「共助」の動き。その一方で透けて見えるのは、国や政府による「公助」の貧弱さだ。自宅療養者を取り巻く困難はもちろん、生活困窮者や自殺の増加などコロナ禍で人々の暮らしが追いつめられる中、「国民の命と健康を守っていく」役割を十分に果たしているとは言い難い。

僕がやっている支援は、本来であれば『公助』の仕事で、国に求めていかなければいけないこと。でも、それが機能不全を引き起こしている現実がある。『共助』があるから『公助』はおろそかにしてもかまわないと、今の構造が強化されてしまうような事態は絶対に避けたいですね。

 ただ、今この瞬間にも誰かが危機に瀕しているときに、手をこまねいていられませんし、地縁や血縁を頼れない人が増えた社会だからこそ、個人が互いにケアし合う道も探っていかなければいけない。コロナ禍になってからというもの、感染不安が広がる中で疑心暗鬼になって、世の中全体がギスギスしていたと思うんです。政治が余計な分断を生んだりして、人間同士の信頼が常に揺さぶられていた。そうしたなか、フードレスキューのような動きが自発的に広がっていくことで、世の中、捨てたものじゃないなって、殺伐としたムードも変えられるんじゃないかと期待しています

 フードレスキューを続けるうちに、周囲の目を気にして苦しみを押し隠す人が多いこともわかってきた。

「ひところ“コロナ差別”が問題になっていましたが、感染を周囲や同僚に知られたくない人、近所に気付かれたくないという人がいまだに多いみたいです。でも、僕のフードレスキューだったら何のしがらみもないし、メールを送るだけでいい。赤の他人だからできることなんです。

 ネット上での未知の個人同士のやり取りには不確実性がつきまとうので、支援する側にはきちんとした判断力やリテラシーが必須ですが、トライしていく価値はあると思っています。もっと応募が来てほしいし、困っている人は遠慮しないでほしい。社会で置き去りにされた、見過ごされやすい人にこそ届けられたらと願っています


フードレスキューへの申し込みは七尾旅人さんのホームページから
http://www.tavito.net/cgi/mail/index.html
フードレスキューについて各地の情報は七尾さんの『note』にも掲載
https://note.com/tavito/