「作品のキーとなる役どころを任せていただけるようになったのは、本当にありがたいと思っています」

 “ネクストブレイク”と注目の古川琴音。昨年は、NHK朝の連続テレビ小説『エール』で主人公夫婦のひとり娘役、『この恋あたためますか』ではヒロインの友人の中国人留学生役、今年は『コントが始まる』で芸人を目指す主人公のひとりに惹かれる女性役をそれぞれ好演。

 ドラマだけでなく映画『十二人の死にたい子どもたち』『花束みたいな恋をした』、ベルリン国際映画祭審査員グランプリ受賞作『偶然と想像』(12月公開)など出演作が引きも切らない。

 そんな彼女が芸能界入り直後の3年前に撮影し“原点”となった初主演映画『春』が10月1日に公開される。認知症になった祖父とふたり暮らしをする美大生の1年間を描いた作品で、監督・脚本を担当した大森歩の実体験がモチーフになっている。

「監督はオーディションのときから作品への思い、撮影ではシーンの前に、おじいさんとの思い出を丁寧に説明してくださいました。監督にいろいろな話をしてもらったことが自分の経験のように積み重なって、いろんなことを感じながらお芝居ができたように思います。

 監督の思いやこだわりが前提にあることを知れたことで、ひとつひとつの作品に対して自分ができることを精いっぱいやろうと思える基礎になって、その姿勢はいまも変わっていないです」

中・高・大学と演劇部に在籍

 習い事のバレエをきっかけに舞台が好きになり、中学、高校、大学と演劇部に在籍した。

「バレエを始めたのは3、4歳からです。母親が連れて行ってくれた公演がカッコよくて教室に通うようになりました。

 バレエを通して舞台に立つこと、人前で何かをやることが好きになり、中学から演劇部に入りました。高校、大学でも舞台に立つことを演劇部で続けました。

 習い事や趣味は続かなくて、続いたのが演劇だけ。就活する前に一度プロの世界にチャレンジしてみようと思いました」

 樋口可南子、安藤サクラらが所属する事務所のオーディションを受けて合格した。

「演劇以外、何をしたいかわからなかったので結果、就活になりました。もし落ちていたら休学していたと思います。サークル活動に忙しくてバイトもしていませんでした。とりあえずいろんな経験をしようと考えていましたが、その前にご縁があっていまに至っています」