家庭教師費用が60万円でも
親の介護を見越して受験

 康子さんは娘の高校受験が大変だった経験から、小6になった息子の中学受験の準備を始めました。

「いわゆる御三家と呼ばれる名門校を志望している子は、低学年から塾通いをしていました。中学受験を視野に入れている家庭は、だいたい小4から通っているのでスタートが出遅れたんです」

 そう語る康子さんは、進学塾の講師経験がある家庭教師を見つけ、息子はマンツーマンで勉強を見てもらっています。

時給3000円で、ほぼ毎日3~4時間見てもらいました。まずは基礎学力の構築が大事だと思ったんです。今は少しペースを抑えて週に2、3回ほどにしていますが、9月から見てもらっていて、受験本番の2月までの期間で最終的にはトータル60万円ほどになると思います。でも塾通いが必要と言われている小4から通っている子と比べたら、いくぶんか安くすんでいますね」

 康子さんの息子は、大学の付属校を第一志望に狙っているそうです。それには康子さん自身の悩みが関係していました。

「私の親はもう80歳。足腰が弱くなってきているし、いずれ介護も必要になってきそう。私はひとり娘なので、介護の負担もあるんです。そう考えると、子どもの受験は早めに終わらせておきたい。ママ友とは、『〇〇中学は入学してからの寄付金がないよ』という情報交換もしています」
 
 やはり、どこの家庭でも中学受験でネックとなるのが学費や受験費用と言えます。

「うちは共働きなのですが、息子の受験費用はすべて私が出しています。夫には『お金を出さない代わりに、口も出さないで』と伝えています。ママ友に、『夫が非協力的だ』と言うと、『うちもだよ』と返事がきてホッとしますね。むしろ受験するママ同士の結束は高まっている気がします。もしかしたら受験校が一緒だったら『向こうは落ちたらいいのに……』とか思ってしまうのかもしれないですが。小学校でも、受験のために学校を休むのがうちの子だけではないって思うとほっとしますね」

 一説には、中学受験受験日のピークである2月1日は、半分近い生徒が欠席する場合もあるそう。

 私立中学以外にも国立中学校、公立の中高一貫校とかつてより受験校の幅が広がっている中学受験合格までのプロセスはよく語られていますが、今は高年収ではなく一般的な家庭からも進学するようになり、より学校内での経済格差も広がっているかもしれません。入学してからのプランもよく考えてから、受験も検討したほうがいいと言えます。


池守りぜね◎東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。Twitter:@rizeneration