「タケシ役のオファーをいただいたときは本当にうれしかったです。『浅草キッド』という原作や曲など、その世界観の魅力は知っていたつもりでしたが、いざそこに自分が参加するとなると、やっぱり怖さを感じて」

 覚悟がないと挑んではいけないのではないか?数日考える中で、どうしても自分が演じたい気持ちが強く湧き上がってきたという。

「タップダンスなど、技術的に習得しなきゃいけないことが多いことは予想できました。しかも、監督は劇団ひとりさん。第一線の芸人さんとして活躍されている方。そのあたりの怖さを少しずつ、覚悟に変えていった感じでした」

 Netflix映画『浅草キッド』。その舞台は、昭和40年代の東京・浅草。大学を中退したばかりで、まだ何者でもなかったタケシが深見千三郎(大泉洋)に弟子入り。ビートたけしになっていくまでを描いている。

「ひとり監督からは“なじませて、自然にタケシになってください”というオーダーで。しゃべり方、歩き方、たけしさん独特の身体の使い方、タップダンス、漫才、コント……。ものすごい練習しました。僕自身、“できるかな”という気持ちと闘いながらやっていた撮影でした」

 本編を見ると、その華麗な足さばきに心底しびれ、“本当にビートたけしの若いころを垣間見ているのでは”という錯覚に陥る。

「ありがとうございます。本当に監督の演出がすごくて。自分の世界観がしっかりある方で、僕にだけじゃないけど、基本的に褒めない。ずっとS(笑)。“もうちょっとこうやって” “OK”みたいな。俳優としては“何か違うのかな”と不安になったり、怖さを感じたりするんですが、それは向上心に変わっていく。誠意を持って挑み、OKをもらいたいという気持ちが強かったですね。

 完成作を見ると、それぞれのキャラクターに愛情がある人だとわかるし、何より面白い。天才だなって感じたし、監督に惚れましたね。モテるだろうな」

出演作に支えられる経験

柳楽優弥 撮影/渡邉智裕

 撮影が行われたのは、'20年。コロナ禍に突入した中でだった。

「いろいろ思うようにいかないと感じていたタイミングでこの作品に出合って。なんだか、すごく自分が強くなれた感じがします。

 僕は出演作に支えられることがけっこうあって。単純に売れてない時期から、ロールスロイスに乗れるぐらいまでの大スターになる男性の話。

 本当にすごいと思うし、“たけしさんにもそんな時期があったんだ”と思うと励まされるし、頑張れる。下の世代にとてもエネルギーを与えている人だと思うんですよね。『浅草キッド』には、まさにそういう力があると思います」

 そして本作は、Netflixで世界独占配信される。逆に劇場公開の予定はない。

「今までハリウッド映画に出ないとダメっていう印象でしたが、Netflixの作品に出たら世界中の人に見てもらえる。それは、本当にうれしいです。エンタメが本当に変わってきているなと感じます。俳優として正直、ラッキーだなとも思っています(笑)」