がん経験者が再発・転移で利用できる保険は3種類

がん経験者が加入できる保険は限られています。

おもな選択肢は以下の3つ。
①無選択型医療保険 ②引受基準緩和型医療保険 ③がん経験者向けがん保険

 ①は年齢要件さえ満たせば医師の診査や告知なしで加入可能。ただし、通常より保険料は割高。しかも、既往症や現在治療中の病気は保障されないので、再発・転移に備えたい人には不向き。

 保障内容も、1入院当たりの限度日数や通算限度日数が短く設定されており、加入後90日間は保障の対象外です。

 ②は、通常の医療保険よりも告知内容が少なく、がんの場合「過去5年以内に悪性新生物・上皮内新生物で入院・手術」、「悪性新生物・上皮内新生物等で診察・検査・治療・投薬中」などの要件に該当しなければ加入できます。

 がんの再発・転移による入院・手術・通院等も保障されますし、保険会社も注力している分野なので、商品のラインナップも豊富。がん経験者が加入できる可能性が高いタイプです。

 ただし、加入後90日間は保障対象外(撤廃している商品もあり)、1年以内に再発・転移等すれば、保障は半額のみ。①に比べると安いもののやはり保険料は割高です。

「がん経験者のために」開発された、がん保険が話題

 そして③は、がん経験者向けに開発されたがん保険。ただし、2021年11月現在、加入可能な商品は3つのみです(前ページの図表参照)。

 このうち、老舗商品といえるのが、2006年8月発売のセコム損害保険の 「自由診療保険メディコムワン」。

 対象は乳がんのみですが、再発・転移またはほかのがんに罹患したとき、自由診療も含めて入院治療費(無制限)と通院治療費(5年ごとに1000万円限度)がかかった分だけ保障されます。

 続いて2016年3月にアフラックの「生きるためのがん保険 寄りそうDays」が発売に。

 がんの種類を問わず加入でき、入院・通院・手術・放射線治療への基本保障に加え、抗がん剤治療やがん先進医療など、がん医療に幅広く対応したバランスのよい保障内容です。がん保険のパイオニアでもある同社らしい商品だといえます。

 そして最も新しく2021年8月に発売されたのがMICIN少額短期保険の「乳がん・子宮頸がん・子宮体がん再発保障保険」。

 対象は女性特有の所定のがんのみですが、注目すべきは、術後6か月を経過すれば加入できることと、診断給付金が受け取れること。

 がんは、診断されてから1~2年で再発・転移がみつかるケースが多いため、がん患者にとって術後短期間で加入できるメリットは大。しかも、医療費以外にも何かとお金がかかる女性には、何にでも使えるまとまった一時金は使い勝手がよく、ニーズの高い保障といえます。

 もちろん、罹患後に保険に入ったほうがよいのかはケース・バイケース。ただ、これまで、もう保険に加入できないと諦めていた人も、選択肢の幅が広がっている現在、再度検討する価値はあるといえるでしょう。

教えてくれた人は……ファイナンシャル・プランナー/乳がん体験者コーディネーター 黒田尚子さん●日本総合研究所に勤務後、1998年にFPとして独立。2009年に乳がん告知を受け、自らの体験をもとに、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行う。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、がんとくらしを考える会・理事、城西国際大学・経営情報学部非常勤講師なども務める。著書に『がんとお金の本』(BKC)『病気にかかるお金がわかる本』(主婦の友社)など多数。